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【第14回保育スキルアップ・オープンセミナー】「発達が気になる子どもたちへの理解と対応の基礎~保育の現場でできること~

2017.07.14

6月10日の第14回保育スキルアップ・オープンセミナーは、「発達が気になる子どもたちへの理解と対応の基礎~保育の現場でできること~ 」をテーマに開催しました。(速報はこちら)

今回は写真とともに、セミナーの様子を凝縮してご紹介します。

講師には東京都立小児総合医療センター 子ども家族支援部門 育成科 幼児・学童デイケア 主任技術員の上部浩子先生をお招きしました。

上部先生は臨床の最前線でお子さんの療育やご家族への支援を担当されながら、各地の保育士研修などで「気になるお子さんの対応」「多様性のある子ども達への支援」といったテーマで研修をされています。

今回は大きくわけて

発達の偏りについて
環境について
子どもの発達と遊び

についてお話しいただきました。

 

発達の偏りについて

どの子にも発達の偏りや多様性がある。「発達障害」の診断がついているかどうかということを気にするよりも、その子の発達の状態を捉え、理解することが大切
発達の偏りの大小や生活に及ぼす影響の有無など、その状態に応じた支援について、長年臨床の現場に携わってこられた中での事例や具体的な方法を、先生とお子さんとのやり取りが想像できるような優しい語りかけを交えながらご紹介いただきました。

DSC_0010

 

【子どもたちの現状】
2012年(平成24年)年度の文部科学省

「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」より
知的遅れがないものの、学習や行動面で著しい困難を示す子どもの割合

小学校…7.7%(なかでも小学校1年生…9.8%)

★最近の調査では15人に1人と言われており、学校の1クラスに2~3人は該当する子どもがいると推計されている。

 

【発達が気になるお子さんの基礎的知識と理解】
1. 脳の発達に偏りがある
私達は、外部から入ってきた情報を脳のそれぞれの機能(前頭葉・後頭葉・側頭葉)でつなげて行動している(ネットワーク)。脳内のネットワークがうまく機能しない子ども達には何か補ってあげる、生活の工夫をしてあげることが必要。生まれもって生活の困難さがあることの理解が必要。

 

2. 得意と苦手(不得意)
普通の人でも得意な所、苦手な所がそれぞれある。
発達の偏りが顕著な子どもは、「得意」「不得意」の差も激しい
その差が大きいと

「天才」
「ギフテッド」・・・神様からの贈り物 秀才やその上の超越した人
「タレンテッド」・・・芸術的なセンスがずば抜けている人

上記のように才能が活かされている場合もある一方で、「苦手」なことで激しく日常生活に困難さが生じている場合、発達障害の診断がされる場合ある。
「得意」と「苦手」は環境によっても変わってきたり、目立つことがある。

 

3. 発達の気になるお子さんの行動と対応について

(1)ワーク「氷山モデルで考えよう!」
担当するお子さんの気になる行動をワークシートに記入

第14回セミナー1

 

(2)発達の気になるお子さんの特徴や傾向
発達の気になるお子さんの行動氷山の水面上の出ている目に見える部分
行動の理由水面下にある見えない部分→お子さんの発達面での特徴、傾向

・お子さんの気になる行動には、それぞれのお子さん特有の理由がある。
そこの部分を推測、想像、理解することによって、お子さんの気になる行動に対して適切な対応や支援ができるようになる。

・感覚、記憶、思考、コミュニケーション力、集中力、興味や関心の幅が狭かったり、敏感過ぎたり、鈍感だったり、苦手だったりすると、特徴的な行動を取ったりや心理的不安などからそれを回避するために困った行動をとる場合がある。

【例】
感覚・・・大きな音、特定の音が苦手→落ち着かない、急に動き出す
記憶・・・思い出せない、覚えられない→朝の支度がなかなかできない
思考・・・自分の予想外の事が起きる、失敗→パニック

・発達の偏りが顕著なお子さんの支援の仕方はオーダーメード。

一人ひとり違いがあり、個々に配慮すべき点が多いことに難しさがある。

 

(3)ワーク&グループシェア
(2)でのお話や具体的な事例の紹介等を参考に、(1)で記入したお子さんの気になる行動の理由を分析したり仮説を立て、できれば対応策まで考え、その後、同じテーブルのメンバーにシェアしました。

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他の方の事例などに耳を傾け、質問したり意見交換したりと参加者同士交流する時間。
各テーブルを周っていらっしゃった先生からも「お水を飲んでくれなくて困ったといったお子さんのお話がありましたね。一般の保育も困りますが、病児保育の場面ではもっと困りますね。」などと参加者の事例をピックアップして対応方法を一緒に考える場面も作ってくださいました。

 

 

環境について

・私たちは環境から情報を取り込み、脳で処理をして行動している。
・家にいる時には落ち着いていても、保育園や幼稚園に通園するようになり、環境が複雑になることで、初めて偏りに気づくことがある。
・発達に偏りがある子どもたちは、環境からの情報を適切に取り込んで活用することの難しさがある。

 →子どもの状態に合わせた環境の調整や工夫が日常生活の中で必要

 

<1> 場所・時間・活動・学習・視覚的な手がかりの構造化
TEACCHプログラム(アメリカで始められた自閉症スペクトラムとその保護者のための支援法)の「構造化」という方法を参考にすることができる。

例)
場所ーロッカー、下駄箱、クラスのマークをつける
時間ータイムタイマーで終わりを知らせる。タイマーがなったら終わりであることを事前に伝える。
視覚的な手がかりースケジュールや活動の方法をカードで視覚化する

<2> 刺激を減らす
<3> 環境を分ける
<4> 落ち着ける場所を設ける

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医療センターのデイケアで実際使われている「活動の視覚化カード」などを紹介していただきました。

 

子どもの発達と遊び

最後に、支援の1つとして”子どもの発達の時期に応じた遊び”と、乳児期、幼児期の各時期に遊びを通して発達の偏りや日常生活への影響に気がついたり、発達を促す方法のポイントをご紹介いただきました。

第14回セミナー5

センターの療育の現場で使っている教材や玩具の紹介や制作方法も教えていただき、参加者からは「明日早速作ってみます!」とのお声もありました。

 

【参加者の感想】

・「実際の保育にどのように取り入れようか考えながら聞いていました」
・「すぐに保育に活かせるセミナーでとても為になった。話が具体的ですぐに応用できることが多くよかった」
・「物腰が柔らかく穏やかなお人柄で先生と交わる子どもやご家族にとってきっと素敵な出会いになられるのだろうと想像され、分かりやすく具体例も多く聞きやすかったです」
・「色々と意見や普段の様子を出し合い学べました」
・「発達においてどの子にもなにかしら偏りがあると聞いて考え方が改めて変えられました。このセミナーを通して現場でも活用できるようにしていきたいです」
・「療育の現場での具体的な例を知ることも出来、診断名がつかないことに不安もありましたが、その必要性よりもその子への支援方法を探して関わっていくことが大切なんだと考えさせられました」

 

今回のセミナーは、参加者の皆様の感想にもあるように、具体的な事例も含めた講義+ワークで理解しやすく、翌日からの現場ですぐ使える内容も多く、参加者の皆様にとっては充実した講義となったのではないでしょうか。

特に病児保育現場では、初めて会うお子さんであることが多く、普段の様子を知らないお子さんが気になる行動をとったりした場面では、今回のお子さんの見方や対応方法はとても参考になるかと思います。

最後の質問タイムでは、「親御さんとのコミュニケーションのとり方はどうしたら?」とのご質問に「上手く話していくためには、まずは親御さんとの関係を作る。信頼できる先生からのお話しは安心して受け止めてくれます。さらに理論的にこういうことだからこうなるとか、なぜそうなのかということもお話できると親御さんも納得されます。理論もしっかり学ばれることも大事です。」と先生が答えられていたことが印象的でした。

上部先生が所属されている東京都立小児総合医療センターでは、定期的に研修を開催されています。(ご関心のある方はこちら

日本病児保育協会は、今後も保育に関わる皆様に学びの機会の提供を続けてまいります。どうぞご期待ください。

 

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