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【無料セミナーレポート】インフルエンザなどこの冬の感染症対策はお済みですか?!

2012.11.22

 

11月に入り、今年も感染症の季節がやって参りました。 ということで、保育スキルアップ・オープンセミナー、記念すべき第1回のテーマは「感染症対策」でした。
ナビタスクリニック院長・久住英二先生を講師にお迎えし、感染症対策講座「冬の感染症対策はこれでバッチリ!」と題してお話しいただきました。

今回はその概要についてお送りします。

インフルエンザ

80~120nmの非常に微細なインフルエンザウイルスが原因で発症します。
ウイルスは自分では複製できないため、人間や動物の細胞、腸管上皮細胞や呼吸器上皮細胞に侵入します。人間の核には自分の遺伝子を複製する機能があるため、侵入してきたウイルスのRNAを複製し、さらに複製されたRNAがまた別の細胞に侵入します。

report_kusumi01.png

これを繰り返すと侵入された細胞(呼吸器の粘膜)が傷んでいきます。
上皮は細胞同士が非常に強く結びついてバリアとなり、ばい菌が存在していてもその侵入を防ぎますが、ウイルスに感染して傷ついた上皮はバリア機能が失わればい菌が入り込むようになってしまいます。

インフルエンザの後は二次的な細菌感染による肺炎などを起こすことが多いのですが、肺炎球菌による肺炎は高率に菌血症を起こして敗血症になり、全身の臓器が傷んで一晩くらいで重症化するため、非常に怖いものです。

ワクチン接種によってインフルエンザを防ぐことで、二次感染も未然に防ぐことができます。公費の補助もあるためワクチンの接種は重要です。

インフルエンザに罹ってしまったら

麻黄湯がお勧めです。子どもに漢方薬は意外な感じですが体に合った漢方薬は美味しいと感じるようで、意外と飲みます。

栄養を摂らなければと思ってタンパク質などを摂っても、具合が悪いときは栄養を吸収して身につけることができないため逆効果です。ウィダーインゼリーはタンパク質なのでお勧めしません。
お粥やうどんなどの炭水化物で栄養補給するのがいいでしょう。
水分補給にはOS1(砂糖と塩と水)がいいです。

RSウイルス

下記の危険因子を持っている乳児は、細気管支炎を起こして死亡するリスクが高くなっています。

  • 6ヵ月未満の乳児
  • 肺の病気がある・先天性心奇形がある
  • 妊娠35週未満の早産児
  • 家族がタバコを吸う
  • 喘息持ち

RSウイルスは潜伏期間が4~5日と長いため、潜伏期間中にウイルスを撒き散らすこともあり拡散をストップすることは難しいです。

「危険因子」がない子どもはほとんど重症化しないこと、RSウイルスに対する特別な治療法はなく対症療法となること、潜伏期間が長いため検査しても流行は抑えられないことから、基本的にRSウイルスの検査は行いません。
また、大人にも感染しますが少し咳の強い風邪になるだけです。ただし、抗癌剤治療中、リウマチの免疫抑制の薬を使っている場合は重症の肺炎を起こすことがありますので、注意してください。

咳エチケット
咳やくしゃみはティッシュでおさえましょう。ティッシュが間に合わないときは肘・袖でおさえましょう。その後、石鹸で手洗いします。

 

ティッシュがないときに手でおさえると、感染源(菌やウィルス)をくっつけて歩くことになるのでNGです。ハンカチでも感染源をポケットに入れて持ち歩くことになるのでNGです。

また、新型インフルエンザが流行したときアルコールがあちこちに置かれましたが、ほとんど効果がないと言われています。
アルコールだけではノロウイルス、ロタウイルスはほとんど不活化されません。
手洗いに勝るものはありません。石鹸をつけてゴシゴシと20秒以上洗って石鹸で手の脂ごと落とし、そこにくっついているウイルスごと洗い流します。
ただし手を洗いすぎると手が荒れてばい菌がつき食中毒などの原因となりますので、ハンドクリームなどで防止しましょう。ワセリンがお勧めです。

マスクは効果がありません。マスクは他人に伝染さないためです。
医者の世界ではマスクを装着したあと絶対触るな、が鉄則です。
※講演では、菌やウイルスの恐怖を分かりやすく映像化したイギリス・NHSのテレビCMを紹介しました。

ウイルス性胃腸炎(ノロ・ロタ)

ロタウイルスやノロウイルスなどのウイルス性腸炎には特別な治療法はありません。 ただし、ロタウイルスに対しては下記2種のワクチンがあり、どちらも3万円ほどです。生後半年くらいで接種を完了する必要があります。

  • ロタリックス:生後6週から、4週間隔で2回、24週までに接種を完了する
  • ロタテック:生後6週から、4週間隔で3回、32週までに接種を完了する

生ワクチンはポリオなど危険な印象があるかもしれませんが、ロタのワクチンは腸重積の副作用も増えないというデータがあります。

ロタは生後5才までに100%罹ります。親も、子どものときに罹っていても免疫が弱っていると罹ることがあり一家で悲惨なことにならないためにも、乳児期にワクチンを接種したほうがいいでしょう。

VPD:ワクチンで予防できる感染症

おたふく:流行性耳下腺炎
内耳がやられ、難聴の原因になることがあります。
おたふくだけで両耳はやられませんが、子どもは中耳炎に罹ることも多く、おたふくと中耳炎で両耳が難聴になることがあります。
3才未満で両側性の難聴になると言語学習できず言葉を覚えられません。
大人の場合は睾丸炎、卵巣炎、膵炎などになる危険性があります。

水疱瘡(水痘)
プツプツが出てきて、ウイルスはその中の汁に存在します。それが空気感染するため、拡大します。大人も罹ります。脳炎、肺炎にかかることがあります。全身が傷だらけになり、傷口からバイキンが入ります。

B型肝炎
中国やアジア圏では人口の7%がキャリアと言われ、多い病気です。
通常の生活では感染しないと言われていますが、誤りです。
性交渉で感染しますし、涙や唾液などからでも感染します。
母親は妊娠時にB型肝炎や風疹を調べて母子感染の対策をしますが、父子感染については対策されておらず実態も分かりません。祖父母から感染する可能性もあります。
佐賀の保育園で保父さんから感染した事例があり、誰がキャリアであるか分からないため、誰から感染するか分かりません。

ワクチンがある病気は重症化することが多いので、なるべく積極的に接種しましょう。

まとめ

  • 感染症予防は侵入門戸をおさえる
  • ワクチンが開発されている病気は罹患率が高いまたは見た目が悲惨
  • 任意接種といえども家族を守るためにはワクチンを接種すべきである

質疑応答

Q
登園許可の目安について
医師から登園許可を貰うことになっていますが、貰ってこない母親もいます。どこまで許可証を貰ってくださいと言ったらいいか、その目安を教えてください。

A
学校保健衛生法で決められているので、それに準じることになります。
法律に決まっていない病気については弾力的に運用します。小児科の先生の中には原理主義的な方もいますが。
良くコミュニケーションをとるドクターに。

Q
保育園は集団保育なので感染拡大を防ぐのは難しいですが、できることがあればしていきたいと思っています。
母親から要望があるのですが、空気清浄機の効果は?

A
空気清浄機はまったく効かないと考えてください。
保護者には、医者が効かないって言ってましたよ、と言ってください。
とにかくしっかり手洗いが重要です。

人間は集団生活をする生き物です。感染するリスクを避けられません。
熱がちょっとある、鼻水が出るんだけど、という状態で保育園に預けてしまうお母さんが多いようです。そういうときは病児保育に預けるというインフラが整ってくれば良いのですが。


最後に、プログラムにはなかったお話が久住先生からありました。

医学部を新設すべき

医師数、病院数、病床数、勤務医数、看護師数など、どれを取っても医療リソースは西高東低の状態です。
とくに、東京に隣接する県は突出して低くなっています。

埼玉、千葉は高度経済成長期まで多くの人が住んでいなかった地域で、成長期に人が増え始めたにも関わらず若い住人が多いため病院を作りませんでした。対応が遅れています。

埼玉県民、千葉県民は、働いている間は東京の病院にかかることができますが、定年後、地元で医療を受けられない可能性があります。
東京のたらい回しが病院はあるけれど満床で入れないのに対し、周辺地域のたらい回しは病院自体が無くて入れない現状です。

以上、医学部を新設しないとこれから大変なことになるよ、という久住先生からの警鐘でした。


 





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