【セミナーレポート】第1部 アナフィラキシーが起きてしまったら!子どもの命を救う 実践エピペンの打ち方
2013.03.11
一般財団法人 日本病児保育協会では、3月10日(日)に第2回保育スキルアップ・オープンセミナーを開催いたしました!参加者募集開始直後から、応募が殺到した今回のセミナー。
今回はその模様をお知らせする前半といたしまして、第1部「アナフィラキシーが起きてしまったら!子どもの命を救う 実践エピペンの打ち方」と題しました、アレルギー対策講座のレポートをお送りします。
▼2103年12月15日にもセミナー開催します!テーマは「保護者とのコミュニケーション×季節に合った手遊び」ぜひご参加ください!
http://sickchild-care.jp/info/2884/
当協会の理事長である駒崎のあいさつの後、第1部が始まりました。
講師はBLS-AED.net(http://yokohama.bls-aed.net/)の渡邊久美子さん。
渡邊さんは、現役のママでありナース。そしてご自身もアレルギーを持つお子さんを育てています。ご自身の体験を交えながら、非常に分かりやすく丁寧な言葉で講義を行っていただきました。
初めは参加者の方々も、初対面ということで、緊張の面持ちでしたが、参加者自身で実際に練習用エピペンを打つ場面もあり、次第に参加者同士のコミュニケーションも生まれ、和やかな雰囲気で会は進みました。とはいえ、アナフィラキシー症状に対する知識は、子どもの命に関わる重要なことなので、良い緊張感も保ちながら、アッという間の90分間でした。
アレルギーとアナフィラキシー
アレルギーとは「本来なら反応しなくてもよい無害なものに対する過剰な免疫(生体防御)反応」のこと。
身近な例でいえば、花粉症が有名ですね。症状は、軽度のもので鼻づまり・くしゃみから、重度のものでは呼吸困難、舌や顔の浮腫、失神まで引き起こします。
アナフィラキシーは、アレルゲン(アレルギー反応のもととなる物質、個人によって異なります)が体内に入り、過剰な免疫反応が全身性の反応を引き起こすことを言います。
症状として、
・血圧低下
・上気道閉塞(窒息)
・蕁麻疹
・まぶた
・唇の浮腫
・腸管障害(下痢)
・下気道閉塞(喘息)
などがあります。
これらの症状は、血管拡張や気管支収縮などから起こるため、血管収縮と気管支拡張を促すアドレナリンという薬剤が主成分のエピペンが、アナフィラキシー症状を緩和するのに有効です。
練習用エピペンを使用してみる
ここで、参加者の方々が二人一組に分かれて実際にエピペンを打つ練習です。
エピペントレーナーを手にとって、まずは自分に。太ももの外側にまっすぐ垂直に押しあてます。このまま10秒ほど押しつけたままにします。針が1㎝くらいは刺さっていますので、抜くときもまっすぐ抜くのがポイントとなります。
次は他の参加者同士で。参加者の方々からは「力加減や安定感が違う」「気持ちが違う」という声が上がりました。注射後は、筋肉注射なので、注射部位を手でもまなければなりませんが、血液感染の恐れがあるため、本人の手を介して行うか、使い捨ての手袋を使用することが推奨されます。
練習用とはいえ、みなさん緊張の面持ち。しかし、貴重な体験をしっかりと積ませていただきました。
エピペンとは言えど万能ではない
まず使用者について。
エピペンは誰でも買える薬ではありません。アナフィラキシーのリスクがある人が、処方資格を持った医師に相談の上、個人用として特別に処方してもらえる薬です。その注射は、原則的には本人か家族、医師にしか使用は許可されません。ただし、2009年には救急救命士に使用が解禁され、同年には学校教職員の、2011年には保育所職員の違法性が棄却されました。
実際に使用する際にも注意点があります。
注射時刻を確認する、あくまでも補助的な緩和の効果なので119番をする、使用後は処方医に返却する、症状の変化をしっかりと記録する・・・などなど。
大切なことは「情報の共有」
重要なのは、「迷わなくていいように、保護者と約束事をきっちり決めておく」ということと、「情報の共有」ということです。
打つタイミングの判断はお子さんによって異なります。過去に起きた症状等をもとに、どういう状態になったら注射をするべきかを処方医から親御さんは説明されています。また、用量も体重によって異なりますので、他の人に処方されたエピペンや、誰のか分からないエピペンを打つ、ということはないように気をつけましょう。
また、打ったらアナフィラキシー症状が治る、ということでもありません。もしもの場合を考えて、救急車が到着していなくともCPRができるような準備が必要です。
上述のように、エピペンを打つタイミング・用量は個人によって異なります。なので、保育者の方は、親御さんとしっかりと情報共有した上で、さらに自分だけではなく同僚や周りの人にもしっかりと伝えましょう。
保育園といった場所で、アレルギーを持つお子さんを預かる場合、保育園に勤める人すべてが、アレルギーを持っている子どもの名前や、親御さんの緊急連絡先、エピペンの保管場所などを把握していなければなりません。
また、もし症状が出た場合には、症状が出た時刻、エピペンを打った時刻、呼吸状態や顔色などの症状の変化をしっかりと記録し、119番通報したときにしっかりと情報の共有ができるような体制を整えておきましょう。
一分一秒を争う場面、正確な知識と実践経験がとても大切になってきます。今回のセミナーでは双方を学ぶことができ、参加者の方々からは、「分かりやすく実践的で良かった」「緊急時の覚悟を感じることができた」との声をいただきました。
「日々子どもたちの成長を見守ってくださり、ありがとうございます。未熟な母である私が、子育てをしながらこうして働くことができたのも、保育士のみなさんがいてくれたからです。これからも沢山の子どもたちの笑顔が続きますようにと願っています。」
こんな言葉で講義を締めくくった渡邊さん。現役のママとして、とても暖かみのある素敵な90分間でした。
第2部「遊びは心の栄養 子どもの成長に寄り添うのはあなた」キッズスマイルカンパニー(http://kidssmilecompany.com/)のコボさんによる、ふれあい遊びワークショップの模様は、近日公開します。
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