【第7回保育スキルアップ・セミナー開催報告(2)】夏の感染症 保育所での対策はこれでバッチリ!
2014.07.22
こんにちは、JaSCA事務局です。お待たせいたしました!
6月21日に実施した第7回保育スキルアップ・オープンセミナー、本日は北浜直先生に講義いただいた第1部の感染症対策講座について詳しくお伝えしていきます。
~この記事の目次~
夏に流行る感染症
夏に起こりやすい皮膚のトラブル
予防接種について
セミナー参加者の感想
▼夏に流行る感染症
~はじめに~
この報告で紹介するのは、「過去一般的と思われていたが、一般的ではなくなったこと」「現在多くの保育所で行われている対策であるが、実は違うこと」「広く知られてはいないが、実は大切なこと」に内容を絞っています。
北浜先生には各感染症の概要(特徴、登園のめやす)をお話しいただきました。概要については当協会の記事でもご覧いただくことができます。各感染症の内容のあとに当協会記事をご案内しておりますので、よろしければご参照ください。
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(1)水痘(水ぼうそう)
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一回発症すると、一生免疫を得ることができる感染症です。
かつては「水ぼうそうにかかったら、うつしてもらいなさい。かかってしまったほうが、おトク」と言われていて、現在でもごく一部のお母さん仲間の中では感染パーティー(みんなで一緒にかかろう)が開かれています。病児保育、保育に関わるみなさんにはぜひ「それは間違いですよ」と、かつての常識を払拭していただくような働きかけをお願いしたいです。
水痘感染者の数万人に1人は合併症(脳炎)を発症します。この秋からの水痘ワクチン定期接種化は、こうした合併症を防ぐことのほかに、高齢化社会の中で高齢者が帯状疱疹として重症化する(幼少期に感染した水痘ウイルスが長い間身体に潜み、免疫力が落ちた所で症状が出てしまう病気)を防ぐといった社会的背景があります。水痘ワクチンの定期接種化については、のちほど詳しくお話しします。
※「水痘(水ぼうそう)」に関する当協会の関連記事は、こちらでご覧いただけます。
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(2)溶連菌感染症
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ウイルスに感染する夏かぜ(プール熱、ヘルパンギーナ、手足口病)と違い、細菌に感染する風邪です。7~10日間抗生物質を服用します。
合併症として急性腎炎が起こることがあります。溶連菌感染症にかかって数週間後、菌が腎臓に達してしまうことで、予後の悪い、なおらない合併症となってしまいます。急性腎炎になっていないかどうかは、2週間後に尿検査を行うことでわかります。
抗生物質を服用してから24時間が経過して、かつ解熱していると登園・登校できるのですが、それで完治ではないのです。溶連菌感染症を発症した後の尿検査が大事ですので、急性腎炎になっていないかどうかの検査まで含めて、きちんと治療することが大切です。
※「溶連菌感染症」に関する当協会の関連記事は、こちらでご覧いただけます。
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(3)夏かぜ(プール熱、手足口病、ヘルパンギーナ)
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いずれもウィルスの風邪のため、抗生物質は効きません。発熱し、一般のかぜより長い期間続きます(5日間程度)が、なおるまで待つしかありません。
厳密にいうと、アデノウイルス=プール熱ではありません。プール熱は、咽頭結膜熱の名前の通り、アデノウイルスに感染し、かつ咽頭や結膜が赤くなるなどの症状を医師が見て判断します。検査では確定できません。
※プール熱(結膜咽頭熱)に関する当協会の関連記事は、こちらでご覧いただけます。
ここ2,3年間でウイルスの形が変わってきていると言われています。水疱ができるため、小児科医でも水痘(水ぼうそう)との区別がつきにくいです。水疱ができた時は、必ず受診して水痘でないことを確認する必要があります。
学校保健法上では、登園・登校禁止の感染症ではありません。3~5日で発疹が消え、熱も下がりますが、発疹が消えた直後も10日くらいは人にうつります。感染を食い止めることができないため、登園・登校禁止の感染症ではないのです。
発熱がおさまり、元気で食事ができれば登園・登校しても大丈夫と考えてください。
※手足口病に関する当協会の関連記事は、こちらでご覧いただけます。
のどに赤いポツポツ(水疱)ができます。
※ヘルパンギーナに関する当協会の関連記事は、こちらでご覧いただけます。
▼夏に起こりやすい皮膚のトラブル
「とびひ」と「水いぼ」の2つに焦点をあてて、お話しいただきました。
「とびひ(伝染性膿痂疹)」は細菌、「水いぼ」はいぼを作るウイルスに感染する違いはありますが、実際に発症するかどうかは子どもの皮膚の状態で決まります。細菌やウイルスは虫さされやあせもなど、肌があれているところから入り込んできます。つまり、皮膚が本来持つバリア状態がしっかりしていれば、とびひ、水いぼはうつりません。皮膚のバリアを保つためには、スキンケアが有効です。
※スキンケアの重要性については、アレルギーの観点からも前回第6回セミナーでも取り上げています。正しいスキンケアの方法も、こちらでご覧いただけます。
※夏に起こりやすい皮膚トラブルとして、「あせも」に関する当協会の記事もこちらでご覧いただけます。
▼予防接種について
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ヒブワクチン・小児用肺炎球菌ワクチン
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2008年より接種が解禁された、小児科医が心から待ち望んでいたワクチンです。
細菌性髄膜炎は死亡に至ってしまう、あるいは後遺症が残るなど、高い割合で重症化してしまうため、小児科医にとって一番こわい病気です。解禁前は年に数百人単位で死亡例がありました。解禁後は、患者数自体が激減(9割減)しています。北浜先生ご自身も解禁前は年に3~4人診断していましたが、解禁後は1人も診断していないとのお話でした。
親御さんの中には「なんとなくワクチンをこわがる」方がいます。
ヒブワクチンについて、先行しているアメリカでは17年間に数億人接種、ワクチンが原因と思われる死亡例は7人というデータがあります。アメリカではヒブワクチンを含めて必要なワクチンを接種していないと、保育園・幼稚園の子どものコミュニティに入ることができません。ワクチンがエチケットとして考えられているのです。
予防接種は人体にとってよいことばかりではありません。ただすべての医療はデメリットとメリットの天秤であるということの理解をお願いしたいです。ワクチンはデメリットより得られるメリットの方が大きいから行うものです。
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水痘ワクチン
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水痘(水ぼうそう)ワクチンがこの秋、おそらく10月に定期接種化されます。1歳以上、3ヶ月間隔で計2回接種となると言われています。
世界標準では、すべてのワクチンが2回接種です。根拠は「ブースター効果」にあります。
ワクチンを1回接種すると、抗体(細菌やウイルスと戦い、からだを守ってくれる、人間のからだの中で作られる物質)が上がりますが、一時的なものです。2回接種するのは、抗体の下がリ始めたタイミングにもう一度接種すると、抗体の持続期間が長くなるためです。
水痘ワクチンを例にとると、ワクチンを接種しても発症するお子さんがいます。年齢でみると、4~5歳が多く、1~2歳は少ないです。これは1歳代で接種したお子さんの場合、4~5歳になると抗体が下がってしまうためです。1回接種した後、3ヶ月後ごろにもう1回接種すると、抗体を持続するブースター効果が8年持続するといわれています。このため、追加接種はとても大事です。これまでの任意接種で1回しかワクチンを受けていないお子さんには、2回めの接種を勧めていただきたいです。
水痘ワクチンの定期化はすでに報道されているため、現在すでにワクチンの接種控えが起きています。かつて四種混合ワクチン開始、ポリオワクチン不活化(いずれも2012年)の時も同じように接種控えが起きました。お子さんのが感染・発症を予防するためには、必要なワクチンを必要なタイミングで接種することが大切です。
※「水痘ワクチン定期化」に関する当協会の関連記事は、こちらでご覧いただけます。
▼セミナー参加者の感想
・「最新で信頼のおける情報を得られた(特にうつる・うつらないなど)」
・「水いぼやとびひの自分の間違った思い込みにも気づかせてもらえました。」
・「これからの話し方や伝え方の参考になりました。」
といった感想が寄せられました。
▶セミナー第1部 アート・セラピー・ワークショップ(上原英子先生)の報告はこちらからご覧いただけます。
関連キーワード: スキンケア, セミナー, ワクチン, 予防接種, 感染症