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【第9回保育スキルアップ・オープンセミナー】突然の発熱や嘔吐。『病気を子どもの成長につなげる保育』のポイントは?

2014.12.22

12月6日の第9回保育スキルアップ・オープンセミナーは、「突然の発熱や嘔吐。『病気を子どもの成長につなげる保育』のポイントは?」と「バルーンアートのワークショップ」をテーマに開催しました(速報はこちら)。

なかでも『病気を子どもの成長につなげる保育』は、私たちJaSCAの目指す病児保育のありかた。

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講師の小川明子先生は1996(平成8)年のエンゼル多摩(川崎市)開設以来、一貫して病気の子どもの保育にあたられています。JaSCAの事務局スタッフも病児保育実習で指導いただく中で、病児保育に対する熱意、長い現場での経験に基づく知識やスキルの豊富さと深さに感銘を受けることがたびたびありました。今回は感染性胃腸炎インフルエンザの流行も例年より早まっているタイミングでご登壇いただくことができました。小川先生のお話のポイントを凝縮してお伝えしていきます。

 

病児保育ってなに?(基礎のキ)

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・種類別にみると、医療機関併設型、保育所併設型、派遣型、乳児院併設型などがあります。
JaSCAの病児保育レポート「突撃★隣の病児保育」でもエンゼル多摩をはじめ、様々なタイプの病児保育をご紹介しています。)
病気に罹患した子どもに、身体的にも精神的にも、そして社会的にも発達に必要なニーズを満たすために、専門職(保育士・看護師・医師・栄養士)が行う子どもの保育と看護のトータルケア。
主に保育士と看護師が連携し、互いの専門性を用いて子どもや保護者に関わります。
・職員配置は国の基準でおおむね子ども3人に対し、保育者1人とされ、ひとりひとりの子どもと密に関わることができます。

 

エンゼル多摩での病児保育(デイリープログラム/一日の流れ)

エンゼル多摩

一日の流れにそってお話しいただきましたが、特に重要な朝の対応(お子さんの受け入れ前後)について抜粋してご紹介します。※参考:エンゼル多摩ご利用の皆様へ(PDF)

・お子さんはかかりつけ医を受診し、発行された主治医指示書を持って入室します。

・お子さんの病状の経過を追いながら病気の様子を、また、今日&昨日の生活リズムや現状の発達の姿を開始の引き継ぎの中で把握します。

・通常とは違う病児保育の場に不安を感じるお子さんもいます。
抱っこをする、玩具を中立ちとする等により、一日の早い段階で関係を作っていき、お子さんが安定できることを優先します。

・1日の保育看護計画を立てます。
まず看護師が看護計画を立て、保育士に申し送りをします。そのあと、保育士は保育計画を立てます。
(エンゼル多摩では、保育終了後に計画に対する評価も必ずあわせて行っています。)

 

保育者に必須!感染予防に関する知識

子どもに多い病気の症状は発熱、咳、鼻汁、発疹、嘔吐、下痢、脱水などです。
感染症が原因で引き起こされる場合が多いです。保育中に保育者が安易に罹患することのないように予防する義務があります。
感染とはウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入し、反応して増殖することです。体内に進入する「感染経路」には、飛沫感染、空気感染、接触感染、経口感染と4種類あります。どの感染症が、どのような感染経路で体内に進入する「感染経路」の知識を保育者が持つことは、感染予防に役立ちます。
例えばRSウイルスは接触感染(感染者に接触することで感染する)ですが、手についた病原体(菌)は何もしないと30分間程の効果を保つくらい強力だそうです。
(感染予防については、こちらの記事認定病児保育スペシャリストの公式テキストでもご紹介しています。)

 

エンゼル多摩での看護のポイント(水分補給と下痢・嘔吐物の処理)

(1)水分補給

1分間に1CC、1時間で60CC飲ませるのが目安です。スプーン1杯が2.8CCくらいなので、3分間でスプーン1杯くらいとなります。
飲んで症状に変化がなければ、1時間ごとに少しずつ量を増やしていきます。
嘔吐の場合は、吐いたら1時間位おなかがおちつくまで待ちます。
お子さんの摂取が難しい状況が続く場合、脱水症状も疑われるので、再受診を保護者に依頼します。

(2)嘔吐物・下痢便の処理
まず保育者が感染予防のため、手袋、マスク、エプロンを着用します。
次にエンゼル多摩では、犬猫用のペットシーツを上からかぶせて、吐瀉物・下痢便を吸収させます。
(ペットシーツの活用は、当日の参加者からも「参考になりました!」との声を数多くいただきました。)
吐いたもの・出たもの(におい)は粒子です。粒子を吸い込むことで保育者もまわりの子どもたちへも感染してしまう恐れがあるためです。
その後、ボロ雑巾でふく、次亜塩素酸ナトリウム(50倍~60倍)での消毒、窓の換気などを行っているそうです。
(消毒液の作り方はこちらの動画を参考にどうぞ!)

 

ケーススタディ&グループディスカッション

セミナーではエンゼル多摩での保育事例を通して、子どもの保育と看護を考えました。
発熱、咳、下痢、嘔吐とお話しいただいたのですが、ここでは発熱と下痢のケースをご紹介します。

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《ケース1:発熱のお子さん(1歳7ヶ月)》

前日の熱は38℃台後半~39℃前半。今朝の入室前は37℃台前半。

◎看護
・熱の様子を観察→熱の変化を熱型表(熱計表)に記入して経過をみます。
・熱以外の症状を観察→せき、はな、耳の痛み、はきけ、下痢、発疹がないかどうかをみます。
(発疹があればすぐに別室に隔離します。)
・クーリング→わきの下を保冷剤で冷やします。(エンゼル多摩で使っているのは、リュックのように背負うタイプとのことでした。)
注意したいのは、高熱であっても手足が冷たい時はクーリングしないということです(むしろ、あたためることが大切です。)
・水分摂取→子どもは非常に水分をとられていきます。循環のスピードは大人の3倍のスピードとも言われています。
下痢や嘔吐がみられなければ、飲みたいだけ飲ませてもよいです。

◎保育
保護者の見送り時に泣いてしまったので、抱っこのあと、ままごと遊びへ誘導してしばらくの間は傍に寄り添って様子をみました。
(お子さんが一人で遊んでいるからといってすぐにその場を離れてしまうと、不安が増してしまうからです。)
そのあと、他のお子さんと一緒に遊べるようになりました。
体調悪化もなく、1日の生活や遊びの様子を中心に保護者に伝え、お子さんの姿を共有しました。
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《ケース2:感染性胃腸炎(下痢)のお子さん(1歳11ヶ月)》

一昨日に軟便と水様便が2回ずつ(計4回)。昨日は便なし。入室前の熱は37.0℃。

◎看護
・便の状態を観察→形状(軟便、泥状便、水様便、粘液便)のほか、量、回数、におい(酸臭、腐敗臭)、血液が混入していないかどうかみます。
・皮膚の清潔を保つ→おしりに赤みがあるようなら、皮膚の保護のためにワセリンを塗ります。治療薬があればそれを塗ります。
・水分摂取→少量ずつ行うことが大切です。

◎保育
入室後すぐにミニカーで遊び始めるものの、他のお子さんがいると嫌がり怒ったり、すぐに泣いていました。時々動きが止まり、ぼーっとして元気のない様子でしたので、保育者と絵本を見て過ごしました。
午睡後すぐに多量の水様便がありました。オムツ上部より溢れるほど(多量)でした。
お迎え時に保護者と1日の様子(活気のない様子)、便の様子を共有しました。あわせて下痢の際の食事内容や水分摂取についてお話しし、診察の目安を伝えました。
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ディスカッションも交えながらの今回のセミナーには、現在病児保育に従事されている方だけではなく、保育所の先生方にも多くご参加いただきました。

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セミナー後のアンケートでは
「実際の現場での対応を聞くことができて、大変勉強になった」
「事例を含めてお話いただき、参考になった」
「発熱時クーリングするかの判断、下痢症状で何を見て判断して対処するか、難しいところが説明されてわかりやすかった」
といった感想とともに、8割強の方から「とても満足」の評価をいただくことができました。
一方で、「時間が短かった」「もっと時間をとって詳しい話を聞きたかった」というご意見もいただいています。
こちらは、今後の運営課題としていきたいと思います。

さて、病児保育を含めた「保育」についての小川先生のお話を紹介し、この報告の結びに代えたいと思います。
今の時代を評して、「お醤油がなくなった時に、お隣りさんに借りるのではなくコンビニエンスストアに走って買いにいかなければならない時代」とおっしゃっていたのが印象的でした。

 

今の時代に求められる「保育」とは

祖父母と同居する世帯が減った(核家族化)のに加え、近所での関わり・つきあいも少なくなり、子どもを見守る「支援者」の数が減っています。家族が孤立化しているといえます。
ここ数年、保育所の「数」は増えてきていますが、同時に保育の「質をどのように担保していくか」「保護者や地域の子育て家庭に対する支援をどうするか」についても大きな課題となっているのは、ご存知でしょうか?

厚生労働省の保育所保育指針では、保育所の役割について「その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない」と表記されています。

これは保育にあたっては、『目の前にいる子どもをよりよくするにはどうしたらよいか?』をつねに考えなければならないということです。
そのために必要であれば、保護者をも含めて、子育て支援として「保育」にあたる必要がある時代だ、ということです。
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次回セミナーは年明けて2015年2月28日(土)の予定です。
詳細は、メールニュースおよび公式サイト公式Facebookページなどでお知らせします。

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