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【セミナーレポート(後半)】第2部アート・セラピーワークショップ 「心の架橋!~絵画を通して子どもと繋がる」

2013.07.02

みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
事務局の梅村です。
7月に入りましたね!梅雨のじめじめとした空気が去って、
気持ちのいい夏が訪れることを願うばかりです。

本日は、6/1に開催された第3回保育スキルアップ・オープンセミナー
ご報告の後半として、第2部アート・セラピーワークショップ
「心の架橋!~絵画を通して子どもと繋がる」の模様をお届けします!

第2部の講師を務めてくださったのは、
カナダBC州公認アート・セラピスト/カナダBC州公認心理カウンセラーの上原英子氏。
カナダ、日本両国で数多くのアート・セラピーの講演、
演習を行っているプロ中のプロです。

▼上原英子先生のブログはこちら
http://kokoronoartwork.blogspot.jp/

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まずは、聞き馴染みのあまりない「アート・セラピー」そのもののお話。
基本的には「上手い下手にとらわれず、お絵かきやアート作りを楽しむ」という姿勢。
セラピーという言葉から、描いた絵を分析する占いのような印象を持たれる
こともありますが、「アートを媒介として人と人とが繋がる」ことが本質であり、
心の傷を癒す効果が現れることもあるようです。

上原先生ご自身は、カナダで主に代替教育プログラムとして
問題行動のある子どもを対象としてアート・セラピーを行っているそうです。

そんな自己紹介につづいて、ブレイン・ジム
「右ひじを左の膝に、左ひじを右の膝に、交互につけてくださいね!」と上原先生。
身体を動かすことによって脳を活性化させます。
参加者のみなさんも早くもリラックスした様子。

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そして、本題に。
アート・セラピーは、保育所や幼稚園、学校の図工とどんな点で異なるのでしょうか。
図工の授業は、教科の一つであるので、子どもは指示を受けて同じことをしなくてはなりません。

一方、アート・セラピーは「クライアントが内的にどう感じているか」
を表現するためにアート作品を用います。
クライアントが、自身でもよく分かっていない感情を、
アート作りで表現することにより、客観的に自分の気持ちを
認識することができるようになります。
創作を通じた自己認識の「プロセス」がアート・セラピーの本質になってきます。
よって絵の上手・下手、描画の技術は全く問題になりません。

 

アート・セラピーの本質は上に述べたとおりですが、それでは、アート・セラピーは
どのような点で効果的なのでしょうか。

言葉や行動で自己を表現しようとすると、どうしても人は「自分を良く見せたい」
という気持ちが出てしまいます。しかし、アート・セラピーでは、言葉や行動を用いず
アートを媒介とするので、言葉にはしたくないネガティブな感情など素直な感情が表れます。
「臭いものに蓋をしても、臭いものはなくならない」、人は、自由な表現をし、さまざまな
感情が十分に表現された時、自己認識が深まり、解放感を味わうことができるのです。

★DSC_5264

アート・セラピーの説明が終わると、いよいよ参加者の方々がマーカーやクレパスを用いて
実際に手を動かしてアートエクササイズを行いました。

 

1つ目のエクササイズはなぐり描き。
2人1組になり、1人が目をつむってグシャグシャと線を描き、
もう1人が紙からはみ出さないようにナビゲートをしてあげます。

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絵ができあがったら、ナビゲートをしてあげていた方が、描いた本人には言わずに
グシャグシャの絵の中から何かを見つけ、それをなぞります。描いた方の人は、
ナビゲートしてくれた人が何を見出したのかを当てます。ここではさまざまなものが
見つかりました。魚、サッカーボール、おにぎり、などなど・・・

 

このエクササイズを通して、予想を越えた豊かなコミュニケーションが生まれます。
たとえば、ストーリー仕立てにしても面白いかもしれません。
絵の中から男の子を見つけ出し、その男の子がさまざまなものと出会いながら旅をしていく。
子どもに絵を描く側になってもらえば、子どもの描いた一つの絵から一つの素敵な物語が生まれるかもしれません。

2つ目のエクササイズでは、2人1組で1枚の大きな紙に、一切のコミュニケーションをとることなく
(ジェスチャーも目配せも禁止です!)絵を描いていきます。

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みなさん、一言も話さずに黙々と絵を描きます。

できあがった絵を見てみると、ペアごとに大きく異なることが分かりました。
お互い選んだ色が入り乱れているもの、中央ではっきりと区切られ、片方の人は左側にだけ、
もう片方の人は右側にだけ絵を描いているもの。
わたしたちが普段もっとも使用しているコミュニケーション手段である言葉を排除すると
それぞれの個性がはっきりと表れてくるものです。

3つ目のエクササイズでは、2人1組で一方が子ども役に、もう一方が保育者役に分かれ、
子どもと一緒にお絵かきをする、という場面を想定したワークを行いました。
ここでは、「お絵かきを子どもとの心の架橋にするには?」ということを学びました。

 

1.可能な限り子どもと同じ姿勢に
子どもは寝ころびながら絵を描くことも多いです。
そんな時は保育者も寝ころび、子どもと目線を同じにしましょう

2.話すときにはアイコンタクトを
子どもはじっと目を見つめられることに圧迫感を覚えることもあるので、
その場合は、鼻、口、首あたりに視線を向けるようにしましょう。

3.子どもの90°横に
対面よりも90°横にいてあげる方が、話がしやすくくつろぎやすいみたいです

4.会話よりも雰囲気
独り言を言って描いているような時でも、そばにいて必要に応じて相槌を打つ。
大人の関心をひきたいけれども、会話するほどでもない、というような時も子どもにはあります。
そんな時は無理に話しかけずに相槌を打ちましょう。

「ふーん」「そうなんだ」「へー」などでもいいのです。

どうしても大人は会話をすることに比重を置きがちですが、
受け入れてあげるような空気、雰囲気を作ってあげることが最も大事です。

5.子どもの方から話すことを促す
子どもが、出来上がった作品を見せて「何に見える?」と聞いてきても「何を描いたかお話して」
と言った風に子どもの方から話すことを促します。たとえば大人が適当に応えてしまい、子どもが
思っていたものと異なるものを言ってしまうと、子どもの記憶には強く残ってしまうものです。

6.子どもの作品はけなさない
これは当然ですね。

7.子どもの作品を褒めない
参加者の方からも驚きの声が上がっていました。上原先生ご自身も、初めにアート・セラピー
の勉強をしていたときに驚いたそうです。
「上手だね」「うまく描けたね」「きれいだね」「かわいいね」はNGとのこと。
安易に褒めてしまうと、ほめられ慣れてしまうそうです。
そして、褒められないと自分の出来が悪いのではないかと不安になることも。
お絵かきでは、褒めるのではなく、その過程や作品を「評価」することが正しい接し方です。

例えば、
「一生懸命塗ってたから、ここすごく濃く塗れているね」
「細かいところまで描かれていて、何が描かれているかすごく分かりやすいよ」
「○○ちゃんらしい作品だね。とても個性的だよ。」
など、絵に対して子どもがしたことを評価するべきなのです。
重要なのはボキャブラリー、言葉ではなく、「雰囲気」であり、
その子やその子の絵に対して印象を持っていることが伝わればいいのです。

 

「あなたを受け入れている」
「あなたと過ごしている時間が楽しい」ということを
相手に伝えることが大切なことなのです。
大人は絵を描いている子どもの横にいてあげて、ムードメーカーになればいいと言います。

最後に上原先生は、ご自身の書いた詩の朗読で講義を締めくくられました。
これは、発達障がいの子どもたちと関わったときに感じたことを詩にしたものだそうです。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『よちよち歩きから始めよう』

私は日本で生まれ育った。
中学で英語のクラスが始まった時、
ワクワク・ドキドキしたっけ。
英語ができるようになって、いつか海外に行くことを夢見て。

日本語を教えにカナダにやってきた時、
夢が実現した!って嬉しかった。
でも日本の文化を教える知識はあったけど、
英語の読み書きやしゃべりはうまくできなかった。

自分が理解されなかった時の不満感
うまく書けなかった時の不安感
他の人が話していることが分からなかった時の救いようのない気持ち
全て味わってきた。

だから、私にはわかる。
自分が理解されず、受け入れられず、
本来の自分の価値を分かってもらえない時の苦しさを。
ただ、他の人の期待に沿うようにできないために。

そんな気持ちの時は,
よちよち歩きから始めよう。
自分は違うよさを持っていることを示し、
自らの気持ちを表現し、
できるだけのことをしてみようよ!

このよちよち歩きは変化を生み出す、
そして、夢の実現に導いてくれる。
少しずつ、毎日一歩ずつ
明るい未来に向かって歩み続けていけばいい。

© Eiko Emily Uehara 2009. All Rights Reserved.

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

————————————————————–

「いろいろなことをきっかけにして、子どもの気持ちに少し寄り添い、
少し引き出し、ふっと笑える瞬間があれば繋がれるのかもしれない」
「ついつい子どもの絵を褒めてしまいがちですが、子どもの絵を描いている
過程を評価するということに気が付きませんでした。また、絵を通しての
色々なコミュニケーションの方法が学べてとても楽しかったです。」

絵の良し悪しではなく、それは心の表現の一種であり、
大人である私たちは、子どもに寄り添って受け入れてあげることで、
そこから気持ちを汲み取り、心を繋いでいく。
おそらくこれは、絵を描くという行為だけではなく、子どもと
接していくうえで常に大切になってくることだと感じています。
子どもの成長に寄り添う立場である私たちは、常にこのことを忘れないで
いければと思います。
毎回参加者の方々から大好評をいただいている、保育スキルアップ・オープンセミナー。
次回開催は9月を予定しております。

 

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