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【幼児の気道異物除去】第10回資格認定試験のポイントと解説③(「心肺蘇生法・気道異物の除去」より)

2018.03.29

 模範解答_1803

第10回認定試験第3問では「心肺蘇生法・気道異物の除去」から、幼児の窒息と気道異物除去の技法である「腹部突き上げ法」の手順について出題しました。

【出題箇所】
●認定病児保育スペシャリストweb講座
講義13「心肺蘇生法・気道異物の除去」
●認定病児保育スペシャリスト試験公式テキスト
巻末資料「気道異物の除去」(120ページ)

試験課題

【状況設定】

あなたは病児保育施設に勤務しています。
食事の時間、ミニトマトを食べていた3歳の男の子コタロウくんが急に苦しみだしました。
意識はありますが、咳もできない様子で、苦しそうに手足をばたつかせています。
※119番は通報済とします 

【設問1&設問2】
(制限時間:1分以内に回答用紙に記入、記入後1分以内で発表)

苦しそうにしているお子さんは、窒息状態になっています。
なぜ窒息状態になったと考えられますか。回答用紙に記入してください。
設問1で記入した内容をもとに回答してください。 

【設問3&設問4】
(制限時間:3分以内に回答用紙に記入、記入後2分以内で発表)

設定にある119番通報のあと、”背部叩打法”と”腹部突き上げ法”の処置を行います。
“腹部突き上げ法”の手順を回答用紙に記入してください。
設問3で記入した内容をもとに“腹部突き上げ法”の手順を回答してください。
※処置の間、コタロウくんの状況に変化はありません。

 

合格の基準

この設問では、以下の2点について判定を行いました。
・食事中の子どもになぜ窒息がおきたかが理解できているか
・幼児に対する気道異物の除去(窒息解除)「腹部突き上げ法」の手順を正しく理解しているか

 

ポイント解説

この設問の採点基準です。 

【設問1&設問2】

今回の設定ではミニトマトを食べたあとにお子さんが苦しみはじめ、窒息状態であることが明示されています。
食べ物による窒息を引き起こす症状として考えられるのは、「誤えん」です。
食べものや誤飲したものが気管(喉頭に続き、左右の気管支に分かれるまでの長さ約10㎝、直径約2cmの円筒状の細長い管)に入ってしまうことを「誤えん」といいます。 

ではなぜ「誤えん」が起きるのでしょうか。
子どもの誤飲の恐れを喚起する説明として、3歳児の最大口径は39mmであることがよく使われます。トイレットペーパーの芯の直径でたとえられることもあります。これは同時に、3歳の子どもは直径39mmより小さい食べ物を丸呑みできてしまうことを示しています。

ミニトマトは直径39mmより小さい食べ物です。問題ではミニトマトの形状に関する記載はありませんが、ミニトマトを丸呑み、あるいはよく噛まずに食べてしまったとしたら、誤って気道に入り、気管をふさいでしまうことが可能なのです。

今回窒息状態となったのは、ミニトマトが気道につまる「誤えん」により、気道(鼻・口から吸った空気が肺に達するまでの通り道)が完全にふさがれたからです。
次の処置・対応するためには、なぜ窒息が起きているかという正しい状況判断ができることが大切です。

【設問3&設問4】

3歳のコタロウくんは「幼児」ですので、気道異物の除去には「背部叩打法」「腹部突き上げ法」を用います。
「腹部突き上げ法」の処置については、気道に詰まったものを吐き出させるために効果的な握りこぶしを当てる場所(へその上部またはみぞおちの下)と突き上げの方法が特に重要です。
1つの方法を終える都度に口の中を確認し、取れなかった場合はもう1つの方法を行います。異物が除去できるまで2つの方法を交互に繰り返し行います。
今回は「腹部突き上げ法」の手順について口頭で説明していただきました。

 

模範解答例

【設問1&設問2】

(模範解答)
誤嚥により、気道に異物(ミニトマト)がつまり、窒息状態になっている。 

【設問3&設問4】

「腹部突き上げ法の手順」
(1)子どもが驚かないように声をかけておく
(2)子どもの背後に回ってウエスト付近に手を回す
(3)片手で「へそ」の位置を確認する
(4)片手のこぶしを子どものへその上(またはみぞおちの下)あたりにあて、もう片方の手でこぶしを握る
(5)すばやく手前上方に向かって圧迫するように突き上げる
※気道につまったものを出すため、すばやく-手前上方-圧迫など突き上げのポイントとなる表現が入っているかどうかを評価しました
(6)(突き上げる回数は)5回
(7)ひとつの手法を終える都度、口の中を確認する
(8)背部叩打法と腹部突き上げ法を交互に実施する

腹部突き上げ法

 

※今回は腹部突き上げ法の手順についての課題でしたが、詰まった異物(ミニトマト)を除去できるまで腹部突き上げ法と背部叩打法の処置を交互に実施する必要があります。

問題では処置を行っている間にコタロウくんの症状に変化はみられない、としているため、通報済みの119番通報により救急車が到着するまで腹部突き上げ法と背部叩打法を交互に実施するといった回答があった場合は、加点しました。

子どもの不慮の死亡事故において、「窒息」は0歳では1位、1~4歳では3位と、上位を占めています。(厚生労働省 平成24年人口動態調査より)

子どもの窒息の種類には、今回のように食べ物や異物が気道に入ることによる窒息の他に、溺水による窒息、睡眠中に寝具等で鼻や口がふさがることによる窒息、アレルギー反応で気道が腫れることによる窒息があります。

子ども自身は危険を認識し回避することができないのですから、子どもが事故にあうリスクを減らすためには、保育者である大人の事故感知力と注意力が必要であり、窒息の状況に対面した場合には、慌てずに処置できるように定期的に手順の確認をすることが必要です。

 

▼参考動画:幼児の気道異物を除去する方法 背部叩打法と腹部突き上げ法(出典:日本赤十字社)
https://www.youtube.com/watch?v=kwwNoKYp3tU

▼参考:第8回保育スキルアップ・セミナー開催報告】5~6分が生命の分かれ目!保育の現場に潜む『子どもの窒息』即時対処法http://sickchild-care.jp/activity/5545/

 

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