【病児保育の引き継ぎのポイントとは?】第11回資格認定試験のポイントと解説①(「病児保育の1日」より)
2018.09.14
第11回認定試験 第3問では、「病児保育の1日」から、「開始の引き継ぎ」について出題しました。
(※以降、第2問→第1問の順に公開いたします)
「開始の引継ぎ」は、病児保育の1日の中でも最も重要な場面のひとつです。
病児保育は、保育園と異なり、「保育を行う子どもとその日初めて会う」というケースが多く、保育を行ううえで必要な情報が十分に揃っていない状態から始まります。
・昨晩から今日にかけてどんな様子だったのか
・食欲はどうか
・いつもと比べて気になる点・違う点はどこか
など、細かな引き継ぎを行うことで、安全な保育を行うことができ、親御さんも安心して職場に向かうことができます。
しかし、ゆっくりと時間をかけて引き継ぎを行えばよいかというとそうではありません。実際の場面では、親御さんも「早く仕事に行かないと!」といった思いから急がれていることが多いです。
そのため、「限られた時間で、保育に必要な情報を聞き出せるか」が「開始の引き継ぎ」においてのポイントとなります。
「開始の引き継ぎ」は第8回認定試験でも出題されました。(過去問題として公開しております)
今回の出題との違いとしては、
第8回:連絡票の項目の一部が空欄になっていた (親御さんの記入漏れがあった)
第11回:連絡票はすべて埋まっていた (親御さんの記入漏れがない)
といった点があり、連絡票上に情報が出揃っている中で、細かに確認すべき情報を親御さんに確認できるか、が問われる出題となりました。
試験課題
【設定】
あなたは病児保育施設に勤務しています。
本日は1歳3ヶ月の男の子「ハルくん」のお預かりです。
ハルくんは風邪の診断で、下痢や発熱などの症状がみられ、機嫌が悪く、食欲もありません。
- あなた・・・・・病児保育施設に勤務する保育士
- 試験官補佐・・・・・今回利用のハルくんの母親
「連絡票」は試験用の簡易版となっています。
※弁当、おやつ、飲み物は保護者が持参
【設問1】制限時間:1分
設定に沿って病児保育の「開始の引き継ぎ」の準備を行ってください。
連絡票には自由に書き込みをして構いません。
準備が終わりましたら、「終わりました」と告げてください。
【設問2】 制限時間:5分
実際に「開始の引き継ぎ」を行ってください。
試験官補佐が母親役をします。
出だしは「おはようございます」からはじめてください。
「引き継ぎ」が終わりましたら「終わりました」と告げてください
合格の基準
この課題では、下記の2点について判定を行いました。
(1)「信頼できる保育者」にふさわしい挨拶、言葉遣い、会話のやりとりができている
(2)連絡票で「確認すべき項目」を細かに聞き取れている
ポイント解説
(1)「信頼できる保育者」にふさわしい挨拶、言葉遣い、会話のやりとりができている
開始の引き継ぎは、保育者にとって子どもと保護者との最初のコンタクトポイントです。
問2で『出だしは「おはようございます」からはじめてください。』と回答を統一していますが、この出だしの言葉から採点は始まっています。
もし、保育者のあなたが、
-表情が暗かったら?
-うつむいて、視線をそらしていたら?
-くだけた言葉づかい・口調が厳しい言葉づかいだったら?
子どもの体調が悪いなか仕事に向かうことになる保護者は、どう感じるでしょうか?
保護者に不快感や不安感を与えることにつながりかねません。
保護者に信頼の前提となる好印象を与えるためには、笑顔で、保護者の目を見て、敬語での会話を心がけなくてはなりません。
(2)連絡票で「確認すべき項目」を細かに聞き取れている
連絡票を見ると、一見、すべての項目が埋まっているように思えます。
ただし、その情報で十分でしょうか?
前述のように、病児保育は通常の保育と異なり、毎日利用するものではありません。
その日が初めての利用、というケースも多々あります。
開始の引き継ぎ時に、保育者が保護者からできる限りの情報を集めることで、その後の保育中のリスクを減らすことができ、より良い病児保育を行うことができます。
では、どんなことを「開始の引き継ぎ」で確認すればよいのでしょうか。
今回の試験における例を、3つあげてみます。
<症状について>
連絡票を見ると、ハルくんの病名は「風邪」、主な症状として「発熱・下痢・咳・鼻水」があることが分かります。
では、具体的にこれらの症状は昨日から今朝にかけてどのように出ているのでしょうか?
・下痢は昨日何度くらいあり、今朝は昨日に比べてどうだったか?
・咳はどのような咳なのか。痰の絡んだ咳なのか?乾いた様子の咳か?回数は?今朝は変化あるか?
・鼻水は色付きか、透明か?今朝はどうか?
など、1つ1つをすべて確認するのは時間的に難しいですが、少なくとも「昨日から今日までのハルくんの様子・変化」はひと通り、引き継ぎで確認しておく必要があります。
<アレルギーについて>
連絡票には「卵のアレルギーがある」と記載されていますが、それ以上の情報はありません。
卵は除去の方法に複数の段階がありますので、除去の段階がどのくらいなのか(完全除去、加熱して卵黄のみはOKなど)を確かめることも必要です。
また、設定には「子ども(ハルくん)の昼食(お弁当)・おやつ・飲み物は保護者が持参している」とあります。
子どものアレルギーについては親御さんが最も把握されているでしょうから、心配はないと思いますが、保育者として、念のため、”保護者が持参した物にアレルギーの原因となっている物質が含まれていないかどうか”確認を行うことが求められます。
<与薬について>
連絡票には、与薬を「依頼する」とあります。
「シロップ」と「粉薬」の2種類がある、それぞれ、与薬のタイミングは「食後」で、量は「1目盛り」と「1包」とあり、必要な情報は網羅されているように思えます。
ただし、これらは正しい情報でしょうか。
親御さんの勘違い・書き間違いといった可能性があるかもしれません。
与薬依頼の内容を1つ1つ読み上げ、親御さんに確認してもらう、あるいは、病状連絡票にも記載のある「処方せん」もしくは「お薬手帳」を見せてもらい、実際のお薬を照らし合わせながら保護者と一緒に確認できると、なおよいです。
また、特に粉薬においては、飲むのを嫌がる子どもも多く、家庭によって飲ませ方を工夫しているところもあります。(水に溶かす、団子状にする、など)
「ご家庭ではどのような飲ませ方をされていますか?」と確認するのもよいでしょう。
模範解答例 (※親御さんの回答は割愛)
「-おはようございます」
「本日、ハルくんをお預かりします、保育士の●●と申します。よろしくお願いします」
「本日の保育について何点か確認させてください」
「お子さんが鈴木晴くん、1歳3ヶ月ですね。本日、お連れいただいたのが、お母様の鈴木ゆうこさんですね」
※今回は設問に「試験管補佐を母親役とする」となっていますが、実際の病児保育では、祖父母など父母の親族と引き継ぎを行う場合もありますので、「記載の保護者名と子どもを連れてきた方が同一人物か」、「子どもを連れてきた方と子どもの関係性」を確認するとより良い引き継ぎとなるでしょう。
「本日の緊急連絡先を確認させてください。090-・・・・・・ ですね。こちらはお母様の携帯電話番号でお間違えないでしょうか。」
※緊急連絡先は非常に重要な情報です。親御さんの書き間違いがあるといけないので、当日口頭で確認する必要があります。
「昨日、飯田小児科を受診され、風邪と診断されたということですね。発熱の他、下痢、咳、鼻水の症状があるんですね」
「昨日から今朝までのご様子について確認させてください。おしっこはいつも通り出ていて、便は下痢なので水様便が出ているんですね。こちらは昨晩何回くらい便があり、今朝はいかがでしたか?」
「水分はいつも通りとれているんですね。下痢気味ということなので、日中は気をつけて水分補給するようにしますね」
「食欲はいつもより少ないとのことですが、今朝は何をどのくらい食べましたか?」
「鼻水はいつもより多いとありますが、色などいつもと違う様子はありますか?」
「咳は睡眠時に出ているとありますが、どんな咳でしたか?夜はあまり眠れなかったご様子でしょうか?」
「解熱剤を使用したとありますが、これはいつ頃使用されましたか?今朝は使用されていませんか?使用時の体温は何℃でしたか?」
「続いて、お薬について確認させてください。本日保育中の与薬が”あり”で、内容は風邪薬と整腸剤ですね。それぞれ、お薬手帳はお持ちでしょうか?お薬手帳を拝見しますね。・・・シロップと粉薬があって、与えるのはそれぞれ”食後”ですね。シロップは1目盛り、粉薬は1包ですね」
「ハルくん、卵のアレルギーがあるとのことですが、卵黄のみ/卵白のみ/全卵などアレルギーの範囲を教えていただけますか?加熱しても症状がでますか?念の為の確認となりますが、本日お持ちいただいているお弁当・おやつに卵は含まれておりませんでしょうか?」
「最後に、本日のお迎え時間は17:30でいらっしゃるのはお母様ですね。もし変更がございましたら、必ず事前にご連絡ください。それでは、1日ハルくんをお預かりします。いってらっしゃいませ」
事務局の所感
本問題では、比較的熱が高い設定であったことから「解熱剤」について、また、目立つ項目である「お薬」「アレルギー」については多くの受験生が触れることができていましたが、
「その確認が十分であったか」、あるいは、「それ以外の項目を確認できたか」という点が合否を分ける結果となりました。
残念ながら合格基準点に至らなかった方の多くが、5分という制限時間に対し1~2分程度で回答(引き継ぎ)を終了してしまい、「確認が不十分」といったケースが多く見られました。
今回の解説をもとに学習を深めてください。
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