【幼児の窒息と気道異物除去の手順】第14回認定試験のポイントと解説③(「心肺蘇生・気道異物の除去」より)
2020.02.28
第14回認定試験では「心肺蘇生法・気道異物の除去」から、幼児の窒息と気道異物除去の手順について出題しました。
【出題箇所】
- 認定病児保育スペシャリストweb講座
講義13「心肺蘇生法・気道異物の除去」
試験課題
【状況設定】
あなたは訪問型病児保育の保育士として働いています。
本日は、風邪と診断されているミオちゃん(3歳2か月・女の子)を、ご家庭でお預かりしています。
おにぎりを食べていたミオちゃんが突然、声を出せなくなり、のどを押さえて苦しみ始めました。
※今、この場所にいるのはあなたとミオちゃんのみです。
※アレルギー症状ではないものとします。
【設問1】
今、ミオちゃんはどのような状態だと考えられますか。
また、この状況であなたはどのように対応すべきでしょうか。
<記入> 制限時間:3分
ミオちゃんの現在の状態および、あなたがとるべき行動とその手順を補助用紙に記入してください。
記入が終わりましたら、「終わりました」と告げてください。
<回答> 制限時間:2分30秒
補助用紙に記入した内容をもとに口頭で説明してください。
回答が終わりましたら、「終わりました」と告げてください。
合格の基準
この課題では、下記の2点について判定を行いました。
(1)食事中の子どもに起こった状況を把握できているか
(2)幼児に対する気道異物の除去の対応「背部叩打法」と「腹部突き上げ法」の2つの手順を正しく理解しているか
模範解答例
(設問1)
喉、気管にごはんが詰まって息ができない「窒息」の状態にあると思います。
設定の状況から気道異物除去を試みます。
ミオちゃんは幼児なので、背部叩打法と腹部突き上げ法を行います。
背部叩打法(※胸部突き上げ法との順番は採点に関係なし)は、
① 子どもを抱きかかえ、大腿部で支えます。頭を低くします。
② 背中の肩甲骨の真ん中あたりを、手のひらの付け根で、5回強く叩きます。
その後、異物が出てきているか口の中を確認し、出てきていなければ腹部突き上げ法を実施します。
腹部突き上げ法は、
① 子どもが驚かないように声をかけておきます。
② 子どもの背後に回ってウエスト付近に手を回します。
③ 片手で「へそ」の位置を確認します。
④ 片手のこぶしを子どものへその上(またはみぞおちの下)あたりにあて、もう片方の手でこぶしを握ります。
⑤ すばやく手前上方に向かって圧迫するように5回突き上げます。
再び口の中を見て、詰まっていたものがとれているか確認します。
詰まっているものがとれるまで背部叩打法と腹部突き上げ法を交互に実施します。
ひとつの手法を終える都度、口の中を確認します。
詰まっているものが除去できても、骨や内臓を傷つけている恐れがあるため、受診あるいは救急搬送します。
救急搬送の際、腹部突き上げ法を行ったことを伝えます。
(※模範解答と一言一句同じでなくとも、同じ意味であれば正解としています)
ポイント解説
今回は、おにぎりを食べているお子さんが急に苦しみはじめて、のどを押さえ、呼吸困難の状況が設定されています。
食事中、食後に起こるアクシデントとして考えられることとして、気管に食べ物が詰まっての窒息か食物アレルギーが疑われます。
今回の設定では、アレルギーではないことが記載されているので、窒息であるという状況判断ができます。
子どもの窒息予防を喚起する説明として、3歳児の最大口径は39mmであることがよく使われます。トイレットペーパーの芯の直径でたとえられることもあります。
ご飯は一般的に上記の最大口径とは関係のない食べ物ですが、よく噛まずに大量に飲み込んでしまったとしたら、喉に詰まり、気管をふさいでしまうこともありえます。
実際に窒息事故の多い食べ物としてご飯やパンが上位に挙げられています。
食事時には、一度に多くの食べ物を口に入れず、適切な量をよく噛んで飲み込んでいるかに気をつけることが必要です。
3歳のミオちゃんは「幼児」ですので、気道異物の除去には「背部叩打法」と「腹部突き上げ法」を用います。
「腹部突き上げ法」の処置については、気道に詰まったものを吐き出させるために効果的な握りこぶしを当てる場所(へその上部またはみぞおちの下)と突き上げの方法が特に重要です。
事務局の所感
気道異物除去は頻出問題の1つでもあり、多くの保育現場でも学ぶ機会があるためか、今回の出題でも平均得点が高い傾向にありました。
しかし、受験者の中には乳児の気道異物除去と混同している方や、「腹部突き上げ法」についての重要項目である突き上げる場所など重要なポイントの回答が曖昧な方がいらっしゃいました。
また、回答時に詳細な手順の説明がなく、「背部叩打法と腹部突き上げ法を行います」とだけ答え、回答を終了してしまう方もいらっしゃいました。模範回答を見ていただくとお分かりいただけるかと思いますが、2つの方法のみの回答は大きく”減点”となっています。
子どもの窒息の種類には、今回のように食べ物や異物が気道に入ることによる窒息の他に、溺水による窒息、睡眠中に寝具等で鼻や口がふさがることによる窒息、アレルギー反応で気道が腫れることによる窒息があります。
子ども自身は危険を認識し回避することができないのですから、子どもが事故にあうリスクを減らすためには、保育者である大人の事故感知力と注意力が必要であり、窒息の状況に対面した場合には、慌てずに処置できるように定期的に手順の確認をすることが必要です。
※気道異物除去については、指導する団体によって、内容にわずかな違いがある場合があります。日本病児保育協会の認定試験においては、web講座で扱う内容に基づいて出題・採点を行っています。
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