お宅のエアコン・空気清浄機は大丈夫?子どもを「夏型過敏性肺炎」から守るために必要なこと
2016.08.12
この記事の目次
夏型過敏性肺炎とは(定義)
夏型過敏性肺炎の症状
夏型過敏性肺炎と症状が似ている病気
夏型過敏性肺炎の流行時期
夏型過敏性肺炎の発病様式
夏型過敏性肺炎の抗原暴露から発病までの期間
夏型過敏性肺炎のケアポイント
保育中に気をつけること
参考文献・参考URL
暑い季節の夏に、咳やだるさ、発熱が取れなければ「夏型過敏性肺炎」の可能性があるかもしれません。大人では症状が出なくても、幼児や赤ちゃんは免疫機能がまだ十分に発達していないので、症状が出る可能性があります。また、小さい子どもだと、症状の悪化の危険性も大人に比べると高いので気を付けたいところです。
一般的に耳にする「肺炎」は、病原体となる細菌やウイルスが肺胞(肺の一番奥のふくろ)に感染して起こります。
一方、今回ご紹介する「過敏性肺炎」は、病原体による感染ではなく、原因物質へのアレルギー反応といえます。
「過敏性肺炎」の原因は、病原性や毒性を持たないカビ(真菌)や動物性たんぱく質などの有機物、あるいは化学物質です。このような原因物質を繰り返し吸い込んでいるうちに肺が過剰反応を示すようになり、アレルギー性の炎症が起こるようになります。
この夏に起こりやすい「夏型過敏性肺炎」の原因や症状、治療や対策(予防法)などをまとめました。ぜひ一度、チェックしてみましょう。
夏型過敏性肺炎とは(定義)
夏型過敏性肺炎とはカビの胞子が原因で起こる肺炎です。夏期をピークに発症するので夏型過敏性肺炎と呼ばれています。
この病気の原因となる物質は酵母カビの1種であるトリコスポロン属のカビの胞子を吸い込むことによって、胞子に対するアレルギー反応が起き、肺に炎症が生じる肺炎です。この菌は高温多湿な環境で腐木などを栄養源として発育するので、夏期に西日本を中心とした高温多湿の地域に発生します。
夏型過敏性肺炎の症状
【夏型過敏性肺炎の症状】
•咳、痰
•息切れ
•発熱、高熱
•喘息の悪化
•蕁麻疹(じんましん)
•頭痛
胸部聴診ではマジックテープをはがす時に聞こえるようなパリパリという雑音が聴かれ、胸部レントゲン写真とCTでスリガラス様の淡い陰影が見られます。血液検査では白血球増加、血沈亢進、CRP陽性などの所見が見られ、血液中の酸素が低くなり、肺機能検査では肺活量低下、肺拡散能(DLco)低下が見られます。
夏型過敏性肺炎と症状が似ている病気
気管支ぜんそくと診断されることがあります。
夏型過敏性肺炎の流行時期
カビがエアコンや空気清浄機などで繁殖していることも多いため、5月から10月の間だけ過敏性肺炎の症状が現れることも多いです。カビは浴室と脱衣所の間、台所の流し台、窓付近の畳に多く、カーペットや寝具などでも繁殖します。特に、日当たりや風通しの良くない築20年以上の木造住宅の朽ちた木や畳などでも繁殖します。また、築7年以上の鉄筋コンクリート住宅の3階以下でも多く繁殖します。
夏型過敏性肺炎の発病様式
夏型過敏性肺炎はカビの胞子を吸い込むことによって胞子に対するアレルギー反応が起き、肺に炎症が生じる肺炎です。なので、夏型過敏性肺炎自体はうつりません。
夏型過敏性肺炎の抗原暴露から発病までの期間
抗原となるカビを吸い込んでから4~6時間後に、咳や痰・発熱などの軽い風邪のような症状で始まる事が多いです。風邪だと思って放っておくと症状が重くなり、次第に息切れなどの呼吸困難を伴う過敏性肺炎の症状が現れるようになります。
過敏性肺炎の症状は8~12時間持続しますが、同じ環境だと過敏性肺炎の症状はそれ以降も続き、違う環境に移動すると、たいていの場合は数日から10日で治ります。
夏型過敏性肺炎のケアポイント
治療は原因となっているトリコスポロンを吸入する環境から離れることが必要です。それだけでかなり改善しますが、症状が重い場合はステロイド薬を服用する必要があります。
保育中に気をつけること
まずはカビの繁殖しやすい条件を作らないことが大切です。
予防法としては原因であるトリコスポロンは日当たりや風通しの悪い湿気の多い台所、洗面所、風呂場などにある腐木、マット、畳、寝具などに増殖しますので、腐木の除去、畳替え、消毒などで除去します。また空調装置、加湿器、屋内外を徹底的に掃除してください。
掃除の時に埃やカビを吸い込んでしまわないよう、マスク、プラスティック手袋などで防護してください。また、カビとり剤などで、カビをとろうとして、花粉症などのアレルギー体質になってしまった人もいますので、薬剤の使用は最小限に、換気・防護などに充分に注意して、掃除してください。アレルギー性なので、カビを除去しなければ病気は完治しません。
参考文献・参考URL
・中田クリニック「夏型過敏性肺炎」について
・夏型過敏性肺炎の原因への対策と治療方法
記事の監修:山口義哉先生プロフィール
山口小児科内科 院長
聖マリアンナ医大を卒業し、同大学小児科医局に入局。その後、研修医を経て大学院に入学、ネフローゼ症候群について研究を行う。聖マリアンナ医大付属病院他、病院勤務を経て平成6年2月に山口小児科内科を開業する。