【もう熱性けいれんで慌てない】基本対応のすべて!
2014.09.05
小さな子どもが突然チアノーゼ。
白目をむいて、両手両足をつっぱり、ビクビク震え始めた!
呼びかけても返事がない!
あなたは、落ち着いて正しい対処をする自信がありますか?
いざという時落ち着いて対処できるように、しっかりと知識を身に付けておきましょう!
熱性けいれんサマリ
日本ではだいたい子どもの10人に1人ぐらいの割合で熱性けいれんを起こす
熱性けいれんは熱が出始めてから24時間以内に起こることが多い
熱性けいれんは2~3分で収まることが多い
熱が2~3日続いてからけいれんが起こった場合には髄膜炎や脳炎の恐れがあるので注意
熱性けいれんは家族歴が強い
熱性けいれんについては、認定病児保育スペシャリスト資格公式テキスト第9章「基礎的な看病の方法」(P83)でも取り上げています。
この記事の目次
熱性けいれんとは(定義)
熱性けいれんが発生しやすい年齢
熱性けいれんの原因(どうして起こるのか)
熱性けいれんの種類
熱性けいれんへの基本的な対応
緊急で医師の受診が必要なけいれん
熱性けいれんは再発するのか
保育中に熱性けいれんが起こったら
監修・参考文献
熱性けいれんとは(定義)
熱性けいれんとは、38度以上の高熱に伴って、6歳未満の乳幼児期に起こる発作性疾患で、中枢神経感染症、代謝異常、その他発作の原因となる明らかな疾患がないものをいいます。
熱性けいれんの種類
(左)図1 熱性けいれんに対するアプローチ (右)図2 各疾患概念の相関図
出典:医学書院 週刊医学会新聞 第2837号(2009年7月6日)
小児科診療のフレームワーク【第7回】 熱性けいれん:ERでどうするか?/土畠智幸先生
●単純型熱性けいれん
単純型熱性けいれんでは、全身のふるえ(全般発作と呼ばれます)が続くのは15分未満です。
●複雑型熱性けいれん
複雑型熱性けいれんでは、全身のふるえが15分以上続いたり、体の片側だけがふるえたり(部分発作と呼ばれます)、24時間以内に発作が2回以上起こったりします。
複雑型熱性けいれんが起こる小児は、わずかですが後年にてんかん発作を起こしやすくなります。
熱性けいれんへの基本的な対応
熱性けいれんの70~80%は、心配のない単純型熱性けいれんです。
まずは慌てず、けいれんをよく「観察」することが重要です。
「けいれん中に舌を噛むのを防ぐために割り箸などを口に入れる」という処置は、誤った処置です。
かえって口の中を傷つけたり、吐気を誘発したりする恐れがあるので、絶対にしないでください。
<基本的な対応>
● チアノーゼ、呼吸抑制、意識消失があってもあわてず、おちつくこと。
● 衣服をゆるくし、特に首のまわりをゆるくし、頭部を少しそり気味にして呼吸を楽にする。
● 頭部を躯幹よりやや低くし、横臥位にして顔を横に向け、吐いた物が気道に入らないようにする。
● 吐物、分泌物が口のまわり、鼻孔にたまっていたら、ガーゼで拭き取る。
● 歯を食いしばっている時でも、口の中に物は入れない。
● 体温を測定し、発作の長さ(持続時間)と性状(左右差、眼球偏位など)を観察記録する。
● 口からくすり、飲み物を与えない。
● もとにもどるまで必ずそばにいる。
● 抱っこなどで激しくゆすったり、大声で呼びかけたりして、大きな刺激を与えない。
● クーリングを施し、医師に指示されている場合には、薬剤を使用する。
緊急で医師の受診が必要なけいれん
「熱性けいれん指導ガイドライン」によると、発熱時のけいれんの中でも以下の場合は、良性の熱性けいれんではない可能性があるため、すぐに受診が必要とされています。
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※ただし、一般の家庭内で自分の子どもを看る場合と違い、病児保育や保育の現場ではリスク管理の観点からも考える必要があります。そのため、熱性けいれんが「3分」あるいは「5分」持続する場合で、単純型だと思われても、受診(状況に応じて救急搬送)することが必要です。認定病児保育スペシャリスト試験公式テキストでも、「けいれんが3分以上続く場合や2回以上繰り返すようなら病院を受診」(P83)としています。
また、保育所における感染症対策ガイドラインでは、「けいれんが5分以上治まらないとき」は至急受診、としています。
熱性けいれんは再発するのか
熱性けいれんを発症した子どもの過半数は、生涯を通じて1回しか発作を起こさないといわれています。再発率は25~50%、3回以上の発作反復は全体の9%程度です。
ただし、熱性けいれんは、以下の(1)または(2)場合には再発率が50%と言われています。
(1)1歳未満での熱性けいれん初発の場合
(2)親や兄弟に熱性けいれんの既往がある場合
「熱性けいれんを起こしやすい子ども」の場合、かかりつけ医から熱性けいれんの予防薬として「ジアゼパム(商品名:ダイアップ)」という坐薬が処方されることがあります。熱の上がり際に熱性けいれんを起こしやすいため、37.5℃以上で予防的に挿入し、8時間後にまだ熱が下がらなければもう1回挿入するという使い方になります。
この坐薬の取り扱いには十分注意しなければなりません。保育所保育指針解説書第5章 健康及び安全の中の「与薬への留意点」では以下のように記載があり、「特に坐薬は慎重に」ということが書かれています。
「保育所において薬を与える場合は、医師の指示に基づいた薬に限定します。その際には、保護者に医師名、薬の種類、内服方法等を具体的に記載した与薬依頼表を持参してもらいます。」
保護者から預かった薬については、他の子どもが誤って内服することのないように施錠のできる場所に保管するなど、管理を徹底しなければなりません。
与薬に当たっては、複数の保育士等で、重複与薬、人違い、与薬量の誤認、与薬忘れ等がないよう確認します。
坐薬を使用する場合には、かかりつけ医の具体的な指示書に基づき、慎重に取り扱う必要があります。(予防薬としての坐薬使用時の体温、タイミングがかかりつけ医により多少ことなります)
保育中に熱性けいれんが起こったら
まず、落ち着くことが大切です。
熱性けいれんを目の当たりにすると、そのけいれんが、「単純型」か「複雑型」か瞬時に見分けることが困難なことがあります。小児科のお医者さんですら慌てることがあります。
つぎに、深呼吸して、しっかりと対応することが重要です。
発見者・担当者は落ち着くまでその場を離れずに対応、2番目の人はしっかり観察記録、3番目の人は周りの人と連絡をとります。
さっきまで元気だったのに突然けいれんする・・・ということも稀ではありません。しかし急に高熱になることはまずありませんので、特に熱性けいれんの既往がある児童の場合、日頃からの観察が大切です。
誰でも、いつでも、対応できるよう、熱性けいれんへの基本的な対応を、全職員に繰り返し徹底しておく必要があります。特に与薬の必要な子どもを預かる場合には、手順をマニュアル化し、一定期間ごとに研修を行うなどして「いざ」という時に備えましょう。
最後に、熱性けいれんが起こらないよう、日頃の健康状態の把握が重要です。そして無用な感染症にかかり高熱を出すことの無いよう、予防接種は必ずするように勧めましょう。
参考文献・監修
今回の記事は、下記の資料等をもとに当協会が作成し、青葉区あざみ野の小児科・アレルギー科・内科長浜医院の長浜隆史院長にご指導いただきました。
(長浜先生の突撃レポートはこちら・・・「突撃★隣の病児保育 横浜市あざみ野病児保育室に行ってきました!」)
熱性けいれん指導ガイドライン1996版
http://www.wakodo.co.jp/medical/news/20111102.pdf
→2015年3月に改定されました 「熱性けいれん診療ガイドライン2015」
公益財団法人母子健康協会 第28回母子健康協会シンポジウム「救急よりみた子どもの傷病」
http://www.glico.co.jp/boshi/futaba/no72/con05_09.htm
保育所保育指針解説書
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/hoiku04/pdf/hoiku04b.pdf
保育所における感染症対策ガイドライン
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku02.pdf
医学書院 週刊医学会新聞 第2837号(2009年7月6日)