【ほっとせいの病児保育入門塾】~病児保育の課題とは?~
2014.12.24
みなさんこんにちは。
今回でほっとせい先生による病児保育入門塾は第3回目になります。
第1回と2回では施設型や訪問型の特徴などについて触れてきましたが、今回ほっとせい先生はどんな授業をしてくれるのでしょうか?
第3回、病児保育入門塾の開講です。
病児保育ってどのくらい求められているの?
しのちゃん、前回までの授業(第1回”病児保育ってどんな種類があるの?”、第2回”施設型病児保育の1日が知りたい”)で病児保育が実際にどうやって行われているかわかったと思うけれど、実際に病児保育がどのくらいニーズがあるものか、知っているかしら?
んー・・・今は共働きの家庭も多いから、ニーズはかなりあると思うな。しょっちゅう熱がでる子だと、その度に仕事を休んでいたら、今の世の中なかなか仕事を続けていくのは難しいのかな。実習に行った時も、利用者の方からそういう声をいただいたこともあったし・・・。(詳しくは【4児のママになりたい女子大生/篠ちゃんの病児保育奮闘記】~2日目~をご覧ください。)
実際には育児をしながら働く女性へのアンケートで「仕事と育児の両立で困っていることは何ですか?」という質問に対して、72%の方が「子どもの突然の風邪や発熱」って答えているわ。それに、「必要性を感じる育児支援制度は何ですか?」という質問には86%の方が「子どもの有給看護休暇」とも答えているくらい、病児保育は本当にニーズの多い保育よ。(認定病児保育スペシャリスト試験 公式テキスト,p9)
ニーズがあるなら、あとはもう病児保育施設とか訪問型が対応できるエリアが広がれば完璧だね!
どうして?だって施設型は保育園や幼稚園、訪問型はベビーシッターみたいな運営形態だし・・そんなに難しいことなの?
ふぅ。そんなしのちゃんと、しのちゃんみたいな考え方のそこのあなたのために!今日は病児保育の普及が難しい現状と課題についてお話するわね。病児保育を利用したい親御さんがたくさんいても、それができていないのはなぜか、一緒によ~く考えてみてね。
考えるの苦手なんだけど・・がんばります!私だってそのうち病児保育を利用する日がくるかもしれないものね!
病児保育の普及が進まない現状~財政的側面~
しのちゃんが言うように、施設型病児保育は幼稚園や保育園のような集団保育よね。けれど、決定的に異なる点があるわ。
ん~おしいわ。病児保育って、今日何人お預かりするか、直前までわからないわよね。子どもの病気は突発的で予測ができないわ。安定しない預かり児の人数を考慮して多めに看護師さんや保育スタッフを配置しなければならないわね。
この不測のためのスタッフ配置には人件費がかかって、病児保育施設の安定的な運営を難しくしているの。
極端に言うとお預かりがない日は、収入はゼロなのに支出(人件費)はかかることになるものね。
人件費だけじゃなくて、スタッフの人数もその日の預かり児の人数に上手く合わせることは難しいよね。
財政的な課題はこれだけではないわ。今病児保育施設では政府からの補助金を受けているところが多いけれど、補助金を受けると多くの制約があって、その制約が逆に病児保育施設を苦しめている、という矛盾もあるの。
例えば補助金を受けると、人員配置や利用料金設定に制約がつくのよ。けれどその制約により生まれる赤字部分は、補助金だけではまかなえないことが多いの。結果、運営を助けるための補助金が逆に赤字を生み出す要因になっているの。※注
そういうことだったんだ!病児保育施設の利用料金を見ていると、1日2000円とか3000円とかが多くて、なんでこんなに安いんだろう、って思っていたの。
私だってアルバイトをしたら時給1000円で、8時間働いたら8000円。そう考えると1日2000円の利用料じゃ人件費すらまかなえないだろうな~、って思ってたの。こういうところは補助金をもらっていて、その代わり利用料金に制約があるのね。
※注:東京都福祉保健局によると、「事業を実施するに当たって、あらかじめ利用者負担額を設定すること」と定めており、これに準じて各自治体が一律の利用料金(多くが日額2000円~3000円)を定めています。
ほほ、確かにそうねぇ~。
でもそういうことなの。不安定な事業だから補助金をもらっても、結局その制約が施設を苦しめていることもあるわ。
病児保育の普及が進まない現状~人材的側面~
他にも課題はあるわ。それは私たちが“認定病児児保育スペシャリスト”という資格を作った理由にも関係するわ。
うん。私も実習をしてみて思ったけれど、病児保育って専門性の高い仕事だよね。保育の知識と看護の知識に基いて、臨機応変に対応することが求められるのが病児保育。
そもそも認知度も低くて、その上専門性の高い仕事なのに体系的に学べる場がなかったことが人材不足につながっていたんじゃないかな。
そうね。私たちJaSCAは病児保育や病児保育事業の担い手を増やして「子育てと仕事の両立が当然で、子どもが社会全体で幸福に育てられている日本社会」を目指して“認定病児保育スペシャリスト”という資格を創設したのよね。
ただ、繰り返すようだけど、病児保育を担うには専門性の高い知識や技術が必要だから、私たちは質の高い病児保育従事者を育成することを大切にしているわ。
病児保育を当然のインフラにするためには、病児保育従事者の量も質も必要ってことよね。
私もJaSCAでインターンをしていて、スペシャリストの方々とお会いする機会があるけれど、みなさん本当に“スペシャリスト”の名にふさわしい想いと専門性を持った方々なの。
病児保育の課題とJaSCAにできること
病児保育の現状と課題、わかってもらえたかしら?
病児保育には今私が挙げた以外にも課題はあるけれど、大きく分けて財政的な課題と人材的な課題があることがわかったと思うわ。
両方とも難しい課題だし、だからこそニーズはあっても拡充してこなかったんだよね・・。
私たちJaSCAはその人材的課題を“資格”という形で解決することを目指すわ。
♪キーンコーン カーンコーン♪
あら、時間ね。これで、今日の授業はおしまいよ。今日は今までと違う視点で病児保育のことをお話したけど、病児保育への理解は深まったかしら?
はい、勉強になりました!!
長い道のりかもしれないけれど、病児保育が当然の社会インフラになるその日まで、がんばっていかなきゃね!!
そうね!!あと2回、一緒に病児保育について学びを深めて行きましょうね。