【保存版】気管支喘息の症状から発作対応まで~保育者として押さえておきたいポイントをピックアップ!~
2015.08.11
子どもはちょっとした風邪をひいたときにも、ゼイゼイ・ヒューヒューという喘鳴や軽い呼吸困難を起こしがちです。
3歳になるころには、多くの子どもはゼイゼイ・ヒューヒューすることが少なくなりますが、中にはそのまま気管支喘息に移行する子どももいます。
今回は、「気管支喘息」の症状や対応、そして気管支喘息によく似た別の病気など、押さえておきたいポイントをピックアップしてお伝えします!
この記事の目次
喘息とは(定義)
喘息の症状
喘息と似た症状の病気
喘息の治療
喘息の種類
喘息の発生しやすい年齢
喘息発作時の対応
保育中に気をつけること
記事の監修・参考文献
用語説明
喘息とは(定義)
息を吸ったり吐いたりした時の空気の通り道である気管支の炎症状態が、慢性的に続くのが喘息(気管支喘息)です。
喘息(ぜんそく)の人は、常に気道に炎症を起こしています。
炎症を起こした気道は狭くなり、空気などが通りにくい状態となります。
また、炎症を起こしている気道はとても敏感で、少しの刺激(ホコリやストレスなど)でも発作を起こしてしまいます。
炎症が気道を狭め、ゼイゼイ、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難の症状が起こります。
喘息の症状
せきやたんが出やすくなり、ゼーゼー、ヒューヒューという音(喘鳴)を伴って息苦しくなります。このような状態を喘息発作と呼びます。
日頃は何ともなくてもかぜをひいたり、激しい運動をすることで発作が生じます。
基本的には以下の症状がみられます
・咳が出る
・胸が圧迫される感じがする
・呼吸が苦しい
・息を吐くとき、のどがゼーゼー、ヒューヒュー鳴る
・のどがイガイガする
・たんが出る
・呼吸機能の低下
喘息とひとくちに言っても、軽いものから重いものまで、程度は様々です。
重症の場合には、対処を誤ると命に関わることもあります。
医師の指導のもと、正しい治療を続け、コントロールすることが大切です。
喘息と似た症状の病気
▼喘息様気管支炎(ぜんそくようきかんしえん)
※または「喘息性気管支炎」ぜんそくせいきかんしえん
ウイルスや細菌感染などでかぜをひいた時に、気管支喘息の症状と同じようにゼイゼイ、ヒューヒュー、という喘鳴や、軽い呼吸困難を伴う場合があり、これを「喘息様気管支炎」と呼んでいます。
普通の気管支炎と異なり、呼吸困難を起こすことがあること、かぜをひくと治りにくく、繰り返しやすいことが特徴です。3歳くらいで大多数は治癒しますが、10%くらいは気管支喘息に移行します。
気管支喘息と主な症状が同じで、名前も似ており紛らわしいのですが、全く別の病気です。
「喘息様気管支炎」の原因の多くは様々な種類のかぜウイルスですが、「気管支喘息」はダニやハウスダスト、煙などのアレルギーが原因のことが多く、気管支が慢性的に炎症を起こしているため、かぜをひいていないときにもゼイゼイ、ヒューヒューという喘鳴が起こり得ます。
乳幼児においては、喘息でなくても気道感染に伴い喘鳴が起こることも多く、また、喘息であっても笛声喘鳴(てきせいぜんめい)※を示さないこともあり、年少児における喘息の診断は容易ではありません。
以下の様な病気と区別します。
▼先天性異常、発達異常に基づく喘鳴
大血管奇形
先天性心疾患
気道の解剖学的異常
喉頭、気管、気管支軟化症
絨毛性(じゅうもうせい)運動機能異常
▼感染症に基づく喘鳴
クループ
気管支炎
細気管支炎
肺炎
気管支拡張症
肺結核
▼その他
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
過敏性肺炎
喘息の治療・ケア
喘息の治療には、「症状が起こらないように毎日行う治療」と「症状や発作が起きた時に行う治療」の種類があります。
気道は慢性的に炎症を起こしているので、症状や発作が起きた時だけ治療をするのでは根本的な解決にはなりません。
「経口ステロイド薬」や「長時間作用性β2刺激薬」「抗アレルギー薬」などを用いて発作が起こらないようコントロールし、万が一発作が起きた時には、「短時間作用性吸入β2刺激薬」「テオフィリン薬」「経口ステロイド薬」「抗コリン薬」など即効性の高い発作治療薬を用いて対処します。
喘息発作時の対応のところでも触れていますが、発作時等には気道確保のための対応をします。
喘息の種類
運動誘発性喘息
アスピリン喘息
アトピー型喘息
非アトピー型喘息
>運動誘発性喘息
運動をすることにより、喘鳴や呼吸困難などの喘息症状が起こることを「運動誘発喘息」といい、喘息患者の35%程に発現します。
>アスピリン喘息
気管支喘息が基礎疾患としてあり、アスピリン(NSAIDs)で非常に強いぜんそく発作と鼻症状が誘発されます。成人喘息の約10%に発現します。
>アトピー型喘息
特定のアレルゲンが引き金となって発作が引き起こされるもので、アレルゲンが特定出来るものを「アトピー型」といいます。
アレルゲンと接触すると、体内でIgE抗体が作られ、「I型アレルギー」と呼ばれる炎症反応が起こります。その結果、気道が狭くなって、発作が起こります。
アレルゲンとなるものとしては、ほこり・カビ・花粉・動物の毛・ダニ・食品などがあります。
>非アトピー型喘息
アレルギー性の炎症によって発作が起こるのに、検査をしてもIgE抗体が検出できず、アレルゲンが特定できない場合を「非アトピー型」といいます。
非アトピー型喘息の誘引となるものには、汚れた空気・冷気・風、感染症・煙草の煙・香水などの匂い・ストレス、などがあります。
喘息が発生しやすい年齢
気管支喘息は子どもに発症しやすい病気ですが、近年では成人、特に40〜50代での発症も増加しています。
小児の喘息の九割はダニなどのアレルギーが原因とされるのに対して、成人の喘息の50%はアレルゲンが見つかりません。また成人喘息の約10%の方は解熱鎮痛薬で発作を起こすアスピリン喘息です。
喘息発作時の対応
(1)あわてずに子どもの様子を観察します
・機嫌、顔色、指先や顔の色、目の縁や鼻の周りの色、好んで取る姿勢、痰の絡まり方などをみます
・大人が不安がると子どもにその気持が伝わるので、大人がまず慌てないことが大事
(2)体温を測ります
(3)水や白湯を飲ませます
・お湯や水を飲む時にうまくいかずに、咳き込んで吐くこともありますが、心配ありません。むしろ嘔吐にともなって痰を出させ、その後の呼吸が楽になる場合もあります。
(4)呼吸をゆっくり深くするように声がけします
・(鼻が詰まっていなければ)口を閉じ、鼻から息を吸い込み、お腹をふくらませます。息をゆっくり吐き、お腹をへこませていきます。
・日頃からこの呼吸法を練習しておくと発作時に役に立ちます
(5)気管支拡張薬の吸入や内服、または貼付を行います
・息を吐いてゆっくりと吸いながら薬を吸入します。
・息が吐けないほど、本人が混乱しているときは、内服と吸入を両方行う、貼付で薬の効果を持続させるなど工夫します。
・薬の効果が出てくるまでの様子を観察します。
・吸入薬がないときは内服します。
・同じ種類(例えばβ2刺激薬)の内服焼くと貼付は併用しません。
(6)発作が続くときは、もたれかかる姿勢、または上半身を45度ほど起こした姿勢で休みます
・上半身を起こした姿勢は仰向けに眠る状態よりも楽に呼吸ができます
・楽な姿勢を維持するために、枕やクッション、クッション代わりに折りたたんだタオルケットなどを活用します。
(7)本人が寒くないよう衣類などで温かくして室内の換気をします
・軽い発作の時は、新鮮な空気を吸いに外にでることや、近くをドライブすることも気分転換を兼ねて効果があります
(8)手のひらでさすったり、タッピングします
・ゼロゼロと痰が引っかかって行ったり来たりしているような音がするときは、手のひらをお椀を伏せたような形にして、胸の中央部分やわき腹をリズミカルにポンポンと下から上に叩き上げます(タッピング)。何回かやっていると痰が取れることがあります。
・背中はドンドン叩くのではなく、ゆっくりさすります。本人の気持ちが落ち着くのに役に立ちますし、発作で緊張してカチカチになった身体を和らげる手助けになります。
(9)抱っこ
・背中を冷やさないように抱っこしたり、本人の不安が強い時に抱っこします
・大人が子どもの椅子になるような格好で、大人の足の間に子どもを座らせ、大人のお腹に子どもが背中を預けるようにすると、長時間の抱っこの負担が軽減されます。
【出典「家族と専門医が一緒に作った小児ぜんそくハンドブック2008」/日本小児アレルギー学会監修】
保育中に気をつけること
状況を見極めて、ただしい処置を行うことが大切です。
【重症度を見分けるコツ】
<機嫌>
苦しいほど(つまり重症なほど)子どもは不機嫌になる
<不眠>
同じように重症度が進むほど不眠になる
<陥没呼吸>
重症度が進むほど陥没呼吸が著しくなる。陥没呼吸とは息を吸う時に鎖骨と呼ばれる骨の上の柔らかい部分が凹む現象です。動揺に肋骨と肋骨の間の部分も凹みます。
<肩呼吸>
重症度が進むと、息を吸う時に肩が上がります。
<腹式呼吸>
重症度が進むと、息を吸う時にお腹を突き出すようになります。すなわち腹式呼吸が明らかになります。
<皮膚の色>
重症度が進むほど、皮膚の色は青ざめてきます。
<起座呼吸>
重症度が進むと、横になっていられなくなり状態を起こしたがります。
<心拍数>
重症度が進むほど、呼吸が早くなります。結果として呼吸数が増えます。
<呼気延長>
重症度が進むほど、息を吸う時間より泊時間の方が長くなります。
★ゼイゼイ、ヒューヒューする呼吸音、「喘鳴」は、症状の進行に伴い音が大きくなりますが、あまりに重症化すると逆に聞こえない状態になり、注意が必要です。
★保護者への連絡のタイミング
まずは預かっている薬を服用させるなどして様子を観察します。
30分程で改善の兆しがないようなら連絡する。
記事の監修・参考文献
<記事の監修>
北浜こどもクリニック院長 北浜 直先生(http://www.kitahama-kidsclinic.jp/)
▼小児気管支喘息ガイドライン/リュウマチ・アレルギー情報センター
http://www.allergy.go.jp/
▼一般社団法人日本呼吸器学会
http://www.jrs.or.jp/
▼環境再生保全機構
http://www.erca.go.jp/
▼独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター「NSAIDs(解熱鎮痛薬)不耐症・過敏症」ウエブサイト
http://www.hosp.go.jp/
▼チェンジ喘息
http://naruhodo-zensoku.com/
▼小児気管支喘息治療・管理ガイドライン ハンドブック2013/日本小児アレルギー学会喘息治療・管理ガイドライン委員会
http://www.jspaci.jp/Jpgl_hb2013/
用語説明
▼笛声喘鳴・・・
ヒューヒュー、ゼロゼロという息づかいのこと
▼口すぼめ呼吸
口すぼめ呼吸は、気道内圧を高め、気道閉塞を防止します。息を吐き出すときに、口をすぼめて、ゆっくり(息を吸うときの2~3倍の時間をかけて)息を吐き出す呼吸法です。