• ホーム >
  • 子ども・子育て会議から見る病児保育の「いま」

子ども・子育て会議から見る病児保育の「いま」

2013.06.18

 

 

子ども・子育て会議画像

 

子ども・子育て会議とは?

 

日本の保育政策の行き詰まり

平成24年8月10日の参議院本会議で可決され成立した「子ども・子育て関連3法」。そのうちの一つが「子ども・子育て支援法」です。

近年さまざまなメディアで目にすることになった「待機児童問題」を中心に、「病児保育問題」「小1の壁問題」「”孤”育て問題」など、経済の停滞、それに伴う働き方の変容、家族形態の変化、少子化を原因として、日本の保育政策の行き詰まりは誰の目から見ても明らかです。

しかし、これまでの日本の子ども・子育て支援は決して手厚いものではありませんでした。たとえば、家族関係支出の対GDP比は、日本が1.04%であるのに対し、フランスは3.00%、イギリスは3.27%、スウェーデンに至っては3.35%にまで達しています。

キャプチャ

出典:平成24年版 子ども・子育て白書
http://www8.cao.go.jp/shoushi/whitepaper/w-2012/24webhonpen/html/b1_s2-1-5.html

 

今後の保育を決定づけるもの

そんな中、この法律の成立により、消費増税分のうち7000億円を子育て支援政策にあてることが決定し、多様なニーズのある、さまざまな保育サービスが充実する可能性が出てきました。

「可能性が出てきた」という書き方をしたのは、まだ法律の段階では大まかな骨組みでしかないからです。今後保護者たちの多様なニーズに応える保育サービスが充実していくには、大枠だけではなく、細部までしっかりとした制度設計が必要となるのです。

その細部を決定していくために、有識者、地方公共団体、事業主代表・労働者代表、子育て当事者、子育て支援当事者等(子ども・子育て支援に関する事業に従事する者)が子育て支援の政策プロセス等に参画・関与できるようにと設けられたのが「子ども・子育て会議」です。

簡潔に言うと、「子ども・子育て支援法」の施行に関する重要事項の調査・審議を行います。これからの保育の流れを決定づけていく、とても重要な会議なのです。

 

============================================
【子ども・子育て支援法】
●第一条
この法律は、我が国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に鑑み、児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)その他の子どもに関する法律による施策と相まって、子ども・子育て支援給付その他の子ども及び子どもを養育している者に必要な支援を行い、もって一人一人の子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与することを目的とする。
●第七二条
内閣府に、子ども・子育て会議(以下この章において「会議」という。)を置く。
●第七十三条
会議は、この法律又は他の法律によりその権限に属させられた事項を処理するほか、内閣総理大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議する。
============================================

 

基準検討部会とは

これからの保育政策を方向づけていく「子ども・子育て会議」。「基準検討部会」とは、保育に関する事業を行う上での基準や給付費など、細かい部分を決めていくものです。

親会議である「子ども・子育て会議」では、理念などの大枠を決めていきますが、この「基準検討部会」では、現場での具体的な事項を決めていくというわけです。つまり、この「基準検討部会」において、今後の保育政策の「実際」が決まっていくのです。

 

基準検討部会から見る病児保育の「いま」

「基準検討部会」では、主に

①施設型給付
②地域型保育給付
③地域子ども・子育て支援事業

を議題とします。

①の施設型給付とは、認定こども園や幼稚園、保育所への共通の給付のことです。

②の地域型保育給付とは、都市部での待機児童の解消を目的とした、小規模保育や家庭的保育などへの給付のことで、小規模保育や家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育の事業を、市町村による認可事業としたうえで、地域型保育給付の対象とし、多様な施設や事業の中から利用者が選択できる仕組みを作ることを目指します。

③地域子ども・子育て支援事業とは、子ども・子育て家庭等を対象とする事業として、市町村が地域の実情に応じて実施する事業のことであり、ファミリー・サポート・センター事業や病児・病後児保育事業、放課後児童クラブなどが該当します。

 

施設型給付、地域型保育給付

認定こども園小規模保育園の認知度がようやく世間でも高まってきており、さらに国も本腰を入れて政策に取り入れるようになってきました。いま話題の待機児童問題の解決に一役買っていくでしょう。

 

病児保育は民間主導で訪問型も含め拡充する必要がある

病児・病後児保育事業は次のように定められています。

「地域の児童が発熱等の急な病気となった場合、病院・保育所等に付設された専用スペース等において看護師等が一時的に保育する事業、及び保育中に体調不良になった児童を保育所の医務室等において看護師等が緊急的な対応等を行う事業」

事業類型として、「病児対応型」「病後児対応型」「体調不良児対応型」「非施設型(訪問型)」の4つを挙げています。

各事業への国庫補助として、それぞれ年間で

・「病児対応型」には240万円(年間延べ利用児童数に応じて加算分あり)
・「病後児対応型」には200万円(年間延べ利用児童数に応じて加算分あり)
・「体調不良児対応型」には431万円
・「非施設型型(訪問型)」には670万円

が運営主体に対して支払われる予定です。

公費負担の総額は平成25年度予算案で約145.2億円となっています。交付実績としては、平成24年度で、

・「病児対応型」561か所
・「病後児対応型」541か所
・「体調不良児対応型」507か所
・「非施設型(訪問型)」1か所

となっています。

 

キャプチャ

 

ただし、病児・病後児保育事業の提供・給付の義務付けはなく、市町村の判断に任されています。(※児童福祉法に事業の着実な実施に向けた努力義務はあります)

 

以上の事実が示すことは、

「民間主導で病児保育サービスを拡充していかなくては、
世間の病児保育に対するニーズを満たすことはできない」

ということです。

すでに述べたとおり、小規模保育園の拡充など、待機児童問題は緩和の方向に向かいます。しかし、それは同時に病児保育のニーズのさらなる拡大に繋がるのです。保育所に子どもを預けている親御さん全てが病児保育を必要としていると言っても過言ではありません。よって、小規模保育園や認定こども園を利用する人が増えれば、そのまま病児保育を必要とする人も増えることになるのです。

すると、現状の行政からの補助金のみではこれをカバーするほどの事業拡大は望むことはできません。結果、民間主導で、現在圧倒的に数の少ない非施設・訪問型を含めて、多様な病児保育を拡充していく必要性が生まれてきます。

病児保育はだんだんと増えいていくでしょう。しかし、そのためには非施設型・訪問型も 含めてさまざまな形態で進めていかなくてはならないのです。

次に問題となってくるのは、病児保育を行う事業者が増えていくときに、そこで「質」を担保することが難しい、ということです。

病気になった子どもを預かるためには、それ相応の知識やスキルが必要となってきます。「質」の低い病児保育が広まってしまうことは本末転倒であり、逆に親御さんにとって、そして社会にとってマイナスになってしまいかねないのです。

これが病児保育の「いま」です。

▼子ども子育て会議の資料・動画はこちらでご覧いただけます
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/kodomo_kosodate/index.html

———————————————————————-

上に述べたような現状の中で、病児保育を行う人は増えていきます。そこで、「質の高い」病児保育を、非施設型・訪問型などを含めて 多様な形で全国に広げていきたい、そんな想いを持ってわたしたちは「認定病児保育スペシャリスト」資格を創設しました。全国どこからでも、誰でも、病児保育のプロになるための知識、ノウハウを学べる場としてこの資格を用意しています。

行政主体であれ、民間主体であれ、すべての働く親御さんたちが、個人の実情に合った「質の高い」病児保育を享受することができる、病児保育が当たり前なそんな社会を目指してこれからも活動してまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 





ページトップへ