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保育・幼児教育の第一人者、無藤隆先生に訊く!「病児保育の必要性と学ぶ意義」

2017.11.17

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今年2017年は「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」、そして「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」の3法令が改定された大きな節目の年です。
今回は法令の改定に関わり、保育・幼児教育を30年以上の長きにわたって研究されてきた無藤隆先生のインタビューをお届けします。聞き手は理事長の駒崎です。


 

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無藤隆先生プロフィール

白梅学園大学大学院特任教授 子ども学研究研修所長。
お茶の水女子大学生活科学部教授などを経て、平成16年から白梅学園短期大学学長、平成17年より平成19年10月まで大学学長。平成29年3月まで白梅学園大学子ども学部教授。平成29年4月より現職。文部科学省中央教育審議会委員、内閣府子ども・子育て会議会長をはじめ、保育・幼児教育に関する政府審議会・調査研究会等の座長等を多く務める。


 

駒崎:今回の新保育所保育指針では病児保育、一時保育、障害児保育など、周辺保育に関する記載があまり見られないように思います。
周辺保育に関する先生のご意見などお聞かせいただけますか。

無藤:障害児保育、一時保育については少しずつ予算も増え、拡充されてきていますね。
最も拡充が難しいのが病児保育です。
季節変動による利用者数の変動が激しく、通年でみたとき経営の問題がどうしても出てきてしまいます。
病児保育の場合は、保育を提供する側だけでなく、子どもが病気の時は保護者が休暇を取得できる職場環境の実現も必要だと感じています。

駒崎:待機児童問題が解決しないことで、病児保育は脇に追いやられている感があります。

無藤病児保育はみんな必要だと思っています。私自身にも経験がありますよ。
私の子どもが生まれた当時は育児休業制度も存在せず、妻は産後休暇明けすぐに職場に復帰しました。
復帰後すぐに子どもが肺炎で入院したり他の感染症もあったりで、妻が仕事を辞めることを考えたことがありました。私を含めて、家族で子どもの入院の際は24時間子どもに付き添いましたが、仕事との両立は大変ですよね。
ベビーシッターを使うことで仕事は辞めずにすみましたが、子どもの病気で追い詰められた親の気持ちは、とてもよくわかります。
当時病児保育があったらよかったのにと、今でも思いますね。

駒崎:先生ご自身が病児保育を必要としていたご経験があったのですね。
これからの保育では保育士独自の専門性が必要であるというお話(くわしくはこちらの記事をご覧ください)がありましたが、僕は病児保育にも専門性が必要だと思っています。
熱は出ているけれどできる範囲で子どもの育ちを支援していく、いつもの保育とは異なる専門性に気づき深めていくことはできると。

無藤:これからは大学で病児保育、障害児保育を受けた専門性の高い保育士が出てくるのではと思いますね。

駒崎:障害児保育、病児保育といった周辺保育に対する学生側の意識の変化はありますか。

無藤:保育士養成校に入る学生の半分は、子どもと一緒に遊ぶのが大好きな学生が半分くらい。
一方で「「困っている家庭やお子さんを助けたい」」といったかなり福祉的志向を持っている学生も3分の1くらいいます。そういう学生は養護施設に就職していきます。
現在、学生時代に勉強することで特別支援学校免許を取得できる仕組みがあるので、学生も障害児保育は関わりやすくなっています。一時保育は保育士資格取得の延長上で考えることができます。
学生時代に学ぶという意味でも、病児保育が一番難しいですね。

駒崎:僕が理事長を務める日本病児保育協会では病児保育をeラーニングで学べる仕組みを用意しています。保育士養成校でも「認定病児保育スペシャリスト(アカデミック)」の導入がはじまったところです。

無藤:学校で病児保育をどの程度まで教えるか、学生にとってどういう関わり方があるのか、プログラムを用意してもらえ、学ぶことができるようになっているのは、ありがたいです。
学生時代に病児保育を学んだからと言って、卒業時に病児保育施設に就職するケースは多くないのが現状です。でも、病児保育に関する知識を学生が心得ておくことは大切です。

病児保育に関するノウハウはまだ世の中でシェアされていないですから、先陣を切っていただくことで病児保育の可能性を広げることができたらいいですね。

 


・こちらもあわせてご覧ください。
「病児保育からみた保育所保育指針・改定のポイント」
http://sickchild-care.jp/reference/12535/

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